February 6, 2025 Vol. 392 No. 6
NRG1 融合遺伝子陽性癌に対するゼノクツズマブの有効性
Efficacy of Zenocutuzumab in NRG1 Fusion–Positive Cancer
A.M. Schram and Others
ニューレグリン 1(NRG1)融合遺伝子は,複数の固形腫瘍にみられる反復性の癌ドライバー遺伝子である.NRG1 はヒト上皮増殖因子受容体 3(HER3)に結合し,HER2 とのヘテロ二量体化と下流の成長・増殖経路の活性化を引き起こす.HER2 と HER3 に対する二重特異性抗体であるゼノクツズマブ(zenocutuzumab)の,NRG1 融合遺伝子陽性固形腫瘍患者における有効性と安全性は不明である.
登録制の第 2 相臨床試験を行い,腫瘍の種類を問わない進行 NRG1 融合遺伝子陽性癌患者を,ゼノクツズマブ 750 mg の 2 週ごとの静脈内投与に割り付けた.主要評価項目は,試験担当医師の評価による全奏効(完全奏効または部分奏効)とした.副次的評価項目は,奏効期間,無増悪生存,安全性などとした.
12 種類の腫瘍を有する 204 例が組み入れられ,投与を受けた.測定可能病変を有し,データカットオフ日の 24 週間以上前に組み入れられた 158 例のうち,奏効が得られたのは 30%(95%信頼区間 [CI] 23~37)であった.奏効期間の中央値は 11.1 ヵ月(95% CI 7.4~12.9)であり,データカットオフ日の時点で奏効の 19%が持続していた.奏効は,非小細胞肺癌(NSCLC)(93 例中 27 例,29%,95% CI 20~39),膵癌(36 例中 15 例,42%,95% CI 25~59)を含む複数種類の腫瘍と,複数の NRG1 融合パートナーで認められた.無増悪生存期間の中央値は 6.8 ヵ月(95% CI 5.5~9.1)であった.有害事象は主にグレード 1 または 2 であった.試験担当医師がゼノクツズマブに関連すると判断した有害事象で,とくに頻度が高かったのは,下痢(患者の 18%),倦怠感(12%),悪心(11%)であった.注入に伴う反応(複数の反応を表す用語)は患者の 14%に認められた.1 例が治療関連有害事象によりゼノクツズマブを中止した.
ゼノクツズマブは,進行 NRG1 融合遺伝子陽性癌患者,とくに NSCLC 患者と膵癌患者に対して有効性を示し,有害事象は主に低グレードであった.(メーラス社から研究助成を受けた.eNRGy 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02912949)