心血管危険因子が生涯リスク推定値に及ぼす世界的な影響
Global Effect of Cardiovascular Risk Factors on Lifetime Estimates
The Global Cardiovascular Risk Consortium
全世界における心血管疾患の負担の約 50%は,5 つの危険因子が原因となっている.古典的危険因子の有無が,心血管疾患と全死因死亡の生涯リスクの推定値にどのような影響を及ぼすかは明らかにされていない.
6 大陸 39 ヵ国 133 コホートにおける,参加者 2,078,948 人の個人レベルのデータを調和させた.50 歳の時点での動脈性高血圧,高脂血症,低体重・過体重/肥満,糖尿病,喫煙の有無に基づいて,90 歳までの心血管疾患と全死因死亡の生涯リスクを推定した.余命(心血管疾患と全死因死亡のない追加生存年数として算出)の差も,これらの危険因子の有無に基づいて推定した.危険因子の時間的推移を解析し,危険因子の変化に基づく余命の差を予測した.
心血管疾患の生涯リスクは,5 つの危険因子をすべて有する女性で 24%(95%信頼区間 [CI] 21~30),男性で 38%(95% CI 30~45)であった.5 つの危険因子を有しない参加者と 5 つすべて有する参加者との比較では,心血管疾患のない追加生存年数の推定値は,女性で 13.3 年(95% CI 11.2~15.7),男性で 10.6 年(95% CI 9.2~12.9)であり,死亡のない追加生存年数の推定値は,女性で 14.5 年(95% CI 9.1~15.3),男性で 11.8 年(95% CI 10.1~13.6)であった.5 つの危険因子を有し,それらが変化しなかった場合と比較して,55 歳以上 60 歳未満で高血圧が改善された場合は,心血管疾患のない追加生存年数がもっとも長いことと関連し,55 歳以上 60 歳未満で喫煙が改善された場合は,死亡のない追加生存年数がもっとも長いことと関連した.
50 歳の時点で 5 つの古典的危険因子を有していない場合,5 つすべて有する場合と比較して,男女ともに余命が 10 年を超えて長いことと関連した.中年期に高血圧を改善した人は心血管疾患のない追加生存年数がもっとも長く,喫煙を改善した人は全死因死亡のない追加生存年数がもっとも長かった.(ドイツ心臓血管研究センター [DZHK] から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05466825)