脳梗塞に対する血栓除去術前のテネクテプラーゼ静脈内投与
Intravenous Tenecteplase before Thrombectomy in Stroke
Z. Qiu and Others
大血管閉塞による急性期脳梗塞患者に対し,血管内血栓除去術前に行うテネクテプラーゼ(tenecteplase)の静脈内投与の安全性と有効性は明らかにされていない.
中国で行われた非盲検試験で,大血管閉塞による急性期脳梗塞を発症し,発症後 4.5 時間以内に受診し,血栓溶解療法の適応がある患者を,テネクテプラーゼ静脈内投与後に血管内血栓除去術を行う群と,血管内血栓除去術のみを行う群に無作為に割り付けた.主要転帰は,90 日の時点での機能的自立(修正ランキンスケールスコア [0~6 で,値が高いほど障害が重度であることを示す] が 0~2)とした.副次的転帰は,血栓除去術前・血栓除去術後の再灌流成功などとした.安全性転帰は,48 時間以内の症候性頭蓋内出血,90 日以内の死亡などとした.
278 例がテネクテプラーゼ–血栓除去術群,272 例が血栓除去術単独群に無作為に割り付けられた.90 日の時点での機能的自立は,テネクテプラーゼ–血栓除去術群では 147 例(52.9%),血栓除去術単独群では 120 例(44.1%)で観察された(未補正リスク比 1.20,95%信頼区間 1.01~1.43,P=0.04).血栓除去術前に再灌流した割合は,テネクテプラーゼ–血栓除去術群では 6.1%,血栓除去術単独群では 1.1%であり,血栓除去術後に再灌流した割合は,それぞれ 91.4%と 94.1%であった.48 時間以内の症候性頭蓋内出血は,テネクテプラーゼ–血栓除去術群では 8.5%,血栓除去術単独群では 6.7%に発生し,90 日以内の死亡率は,それぞれ 22.3%と 19.9%であった.
大血管閉塞による急性期脳梗塞を発症し,発症後 4.5 時間以内に受診した患者のうち,90 日の時点で機能的自立が得られた患者の割合は,テネクテプラーゼ静脈内投与後に血管内血栓除去術を行った場合のほうが,血管内血栓除去術のみを行った場合よりも高かった.(重慶科学・健康共同医学研究プロジェクトほかから研究助成を受けた.BRIDGE-TNK 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号NCT04733742)