September 11, 2025 Vol. 393 No. 10
症候性非閉塞性肥大型心筋症に対するマバカムテン
Mavacamten in Symptomatic Nonobstructive Hypertrophic Cardiomyopathy
M.Y. Desai and Others
マバカムテンは,症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)の成人の治療薬として承認されている.しかし,非閉塞性 HCM に対する効果は明らかにされていない.
第 3 相国際共同二重盲検プラセボ対照臨床試験を行い,マバカムテンが,症候性非閉塞性 HCM の成人の機能的能力と患者報告による健康状態を改善するかを検討した.患者を,マバカムテン(5 mg/日から開始し,左室駆出率に基づいて最大 15 mg/日まで用量を調節)を 48 週間投与する群と,プラセボ(見かけ上の用量調節を行う)を投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,最高酸素摂取量のベースラインから 48 週までの変化量と,23 項目のカンザスシティ心筋症質問票・臨床サマリースコア(KCCQ-CSS;0~100 で,値が高いほど健康状態が良好であることを示す)のベースラインから 48 週までの変化量の 2 つとした.
289 例がマバカムテン群,291 例がプラセボ群に無作為に割り付けられた.平均(±SD)年齢は 56±15 歳で,46%が女性であった.最高酸素摂取量のベースラインから 48 週までの変化量の最小二乗平均は,マバカムテン群で 0.52 mL/kg 体重/分(95%信頼区間 [CI] 0.09~0.95),プラセボ群で 0.05 mL/kg/分(95% CI -0.38~0.47)であった(群間差 0.47 mL/kg/分,95% CI -0.03~0.98,P=0.07).KCCQ-CSS の変化量の最小二乗平均は,マバカムテン群で 13.1 点(95% CI 10.7~15.5),プラセボ群で 10.4 点(95% CI 8.0~12.8)であった(群間差 2.7 点,95% CI -0.1~5.6,P=0.06).マバカムテン群では,左室駆出率低下と試験レジメン中断の頻度が,プラセボ群よりも高かった.
非閉塞性 HCM 患者において,マバカムテンは,プラセボと比較して,最高酸素摂取量を有意に大きく改善させることはなく,症状を有意に大きく軽減させることもなかった.(ブリストル・マイヤーズ スクイブ社から研究助成を受けた.ODYSSEY-HCM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05582395)