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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
February 19, 2004
Vol. 350 No. 8
ORIGINAL ARTICLE
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高リスク黒色腫における切除マージン
Excision Margins in High-Risk Melanomaこの無作為試験では,高リスクの皮膚黒色腫患者(腫瘍の厚さが 2 mm 以上と定義)において,外科切除を行う範囲(1 cm あるいは 3 cm)が再発と死亡のリスクに及ぼす影響を検討した.1 cm のマージンは,3 cm のマージンよりも局所限局性の再発リスクがより高いことと関連していたが,外科処置後 3 年での全生存率は両群でほぼ同程度であった.
病変の厚さが皮膚黒色腫の主な予後因子であることは明らかであるが,理想的な切除幅は不明である.この大規模試験の著者らは,高リスクの病変に対して 1 cm の切除マージンを採用しないことを勧めている. -
心臓移植後のアレンドロネートとカルシトリオールの比較
Alendronate versus Calcitriol after Cardiac Transplantationこの無作為試験では,心臓移植後 1 年間の骨量減少予防を目的として投与する,アレンドロネートとカルシトリオールを比較した.対照群は,介入群と同時期に移植を受けたが,いずれの薬物の投与も受けなかった.骨量減少と骨折の発生率については,両介入群に有意差はみられなかった.両介入群では,対照群よりも股関節部の骨量減少は少なかった.カルシトリオールは,高カルシウム尿症のリスクがより高いことと関連していた.
カルシトリオール治療患者では,血清中と尿中のカルシウム濃度を監視する必要があるため,アレンドロネートが心臓移植後の推奨薬となる可能性がある. -
早産および子宮内発育遅延児出産の既往と次回妊娠における死産リスク
Previous Preterm and Small-for- Gestational-Age Births and the Subsequent Risk of Stillbirthスウェーデンで単生児を続けて出産した 40 万人超の女性を対象にしたこの前向き研究では,第 1 子が子宮内発育遅延児であった女性は,とくにその第 1 子が早産であった場合,第 2 子妊娠での死産リスクが高いことが示された.しかし死産の絶対リスクは,転帰の不良な妊娠の既往がある女性でも低かった.
死産の既往はその後の死産リスクを増大させることが知られている.この研究は,出産に関する他の不良な転帰も,死産リスク増大のマーカーである可能性を示している.
DRUG THERAPY
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過活動膀胱の管理
Management of Overactive Bladder過活動膀胱の症状はよくみられるが,苦痛を伴うことが多く,深刻で有害な結果をもたらす恐れがある.多数の要因――下部尿路の障害,神経疾患,行動要因,一般に処方されているさまざまな薬剤――が,この症候群を引き起している可能性がある.この総説では,過活動膀胱症候群の病態生理学,診断的評価,現行の治療法について考察している.
薬物治療で期待される今後の方向には,膀胱への選択性が増大した抗ムスカリン剤,新たな薬物送達システム,下部尿路の知覚神経支配に影響を及ぼす薬剤などがある.
CURRENT CONCEPTS
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急性化学物質被曝事故
Acute Chemical Emergencies急性化学物質被曝事故は,産業事故や職業的曝露,自然災害,テロ行為の結果として起りうる.この論文では,窒息剤,コリンエステラーゼ阻害剤,呼吸刺激剤,発疱剤によって生じる臨床症候群,つまり中毒症状の,迅速な認識と治療における経験に基づいた原則を再検討している.急性の化学物質曝露が起きた場合,通常は関与した化学物質が臨床検査で特定される前に,迅速に治療を行わなくてはならない.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
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ナイトクラブ火災で広範囲に重度の熱傷を負った女性
A Woman with Extensive, Deep Burns from a Nightclub Fire2003 年 2 月にロードアイランド州のナイトクラブで起った火災の生存者は,その多くが重度の熱傷を負っていた.この“Case Record”では,これらの患者のうちの 1 例に対する集学的治療について述べている.
CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH
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粥状硬化症における新たなオキシダント
A New Oxidant in Atherosclerosis最近の研究で,粥状硬化症のプラークがオゾンを生成し,オゾンが低比重リポ蛋白を酸化する可能性が示されている.このことから,粥状硬化症に対する新たなバイオマーカーの可能性が高まっている.
HEALTH POLICY REPORT
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新たなメディケア処方薬費用給付制度
The New Medicare Prescription-Drug Benefit12 月 8 日,ブッシュ大統領は,2003 年メディケア処方薬の改善および 近代化に関する法律(Medicare Prescription Drug Improvement and Modernization Act of 2003)に署名した.この“Health Policy Report”では,Iglehart 氏が,新たな処方薬費用給付制度と,このメディケアの大幅な改革を導いた異論の多い政治過程について述べている.2006 年からメディケアは,年間の薬剤費用のうち,受給者が負担する最初の 2,250 ドルの 75%を補償することになる.また,5,100 ドルを超える薬剤費については 95%を支払う予定である.新たなプログラムは任意加入で,月々の保険料と 250 ドルの免責金が必要である.保険適用は,低所得高齢者に対してより手厚くなるであろう.