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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

August 19, 2004
Vol. 351 No. 8

ORIGINAL ARTICLE

  • 組織ドナーにおける検出されないウイルス血症
    Undetected Viremia among Tissue Donors

    この研究では,組織ドナー 11,391 例のデータに基づき,検出されないものの,ヒト免疫不全ウイルス,B 型肝炎ウイルス,C 型肝炎ウイルス,ヒト T 細胞白血病ウイルスによるウイルス血症を起している確率は,それぞれドナー 55,000 例中 1 例,34,000 例中 1 例,42,000 例中 1 例,128,000 例中 1 例であると推定された.
    これら 4 種類のウイルスの感染率は,初回供血者よりも組織ドナーのほうが高い.より感度の高いスクリーニング法を利用することで,組織レシピエントが感染するリスクを減少させることができる.

  • 抗体陰性の供血者における HIV-1 RNA と HCV RNA の検出
    Detection of HIV-1 and HCV RNA among Antibody-Negative Blood Donors

    米国では 1999 年から,セロコンバーション前のウィンドウ・ピリオドにウイルス血症の供血者から供給された血液を同定するために,核酸増幅検査が用いられている.この方法により,スクリーニングした 310 万単位中,ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)に感染した血液が約 1 単位,また,スクリーニングした 23 万単位中,C 型肝炎ウイルス(HCV)に感染した血液が約 1 単位同定されている.
    供血者のスクリーニングに核酸増幅検査を加えることで,年間で,輸血により伝播する HIV-1 感染を約 5 例,HCV 感染を約 56 例防ぐことができる.その結果,これらの感染の残存リスクは,輸血された血液 200 万単位当り約 1 単位となる.

  • 口唇裂・口蓋裂に対する遺伝的感受性
    Genetic Susceptibility to Cleft Lip or Palate

    口唇裂・口蓋裂に対する遺伝的感受性

    口唇裂,口蓋裂,または口唇口蓋裂は,数個の遺伝子の相互作用と,そしておそらく環境要因が関与して発症する複合障害である.この研究では,インターフェロン制御因子 6 をコードする遺伝子(IRF6)の変異により,口唇裂・口蓋裂のリスクが高まることが判明した.
    この研究は,口唇裂・口蓋裂の家族歴のある家系に生まれる子供のリスク評価における精度向上に向けた,大きな前進を示している.

  • 転移性乳癌における血液中の腫瘍細胞と予後
    Circulating Tumor Cells and Prognosis in Metastatic Breast Cancer

    新しい治療コースを開始した転移性乳癌患者において,血液中の腫瘍細胞濃度の測定を目的とし,全血中の上皮細胞を分離・同定・計測する自動機器を利用した.高い濃度は短い生存期間と関連し,一方,低い濃度からは良好な予後が予測された.
    血液中の腫瘍細胞濃度の測定は,臨床試験に登録された患者の層別化に有用であることが示される可能性がある.

BRIEF REPORT

  • 46XX 染色体を有する女性におけるミュラー管の退化と男性化に関連する WNT4 変異
    WNT4 Mutation Associated with Mullerian-Duct Regression and Virilization in a 46,XX Woman

    WNT4 は,男性への分化を抑制する分泌蛋白で,女性では性腺でのアンドロゲンの合成を抑制すると考えられている.この研究者らは,ミュラー管に由来する構造をもたず,片側腎無形成で,アンドロゲンの過剰分泌の臨床徴候を示す女性について述べている.この女性は,WNT4 遺伝子に機能喪失突然変異を有している.
    WNT4 は,ミュラー管の形成を調節し,卵巣のステロイド産生を抑制することによって,女性における女性表現型の発現と維持に重要な役割を果していると考えられる.

CURRENT CONCEPTS

  • 鉤虫感染
    Hookworm Infection

    鉤虫感染

    熱帯地方や亜熱帯地方の貧困な農村地域では,7 億人以上が寄生虫のアメリカ鉤虫(Necator americanus)とズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)に感染している.寄生虫の成虫は,腸管で失血を引き起し,慢性の鉄欠乏性貧血を招く.鉤虫感染は,無防備な集団において,障害の主な原因である.この論文は,この寄生虫の生活環に関する最近の理解と疾患の病態生理,ならびに大きな利益をもたらす可能性のある,簡単で効果的な治療の選択肢について概説している.

CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

  • 咳と肺結節を呈する女性
    A Woman with Cough and a Lung Nodule

    喫煙歴のある 56 歳の女性が,血液が混じった痰を伴う咳をし始めた.X 線撮影とコンピュータ断層撮影で,右上葉に 2.5 cm の結節が見付かった.縦隔リンパ節腫脹は認められなかった.フッ素で標識したデオキシグルコース(fludeoxyglucose F 18)を用いた陽電子放射断層撮影では,結節での取り込みが認められたが,リンパ節では認められなかった.生検では,非小細胞肺癌であることが判明した.多分野にわたる専門家チームが治療法について述べている.

CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH

  • 重症急性呼吸器症候群に対する候補ワクチン
    A Candidate Vaccine for Severe Acute Respiratory Syndrome

    重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因であるコロナウイルスの外膜蛋白の一部を発現する DNA ワクチンは,SARS のマウスモデルにおいて体液性免疫を誘起する.