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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
March 10, 2005
Vol. 352 No. 10
ORIGINAL ARTICLE
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静脈血栓塞栓症を予防するための電子警告
Electronic Alerts to Prevent Venous Thromboembolism入院患者は,床上安静,癌,大手術の結果,静脈血栓閉塞症のリスクにさらされる可能性があるが,そのような患者すべてに深部静脈血栓症の予防措置がとられているわけではない.深部静脈血栓症のリスクのある患者に対する予防措置を指示するよう,医師に促す電子警告システムを用いることで,予防措置の実施頻度が増加するだけでなく,静脈血栓閉塞症のリスクが減少することも明らかになった.
これらの知見から,入院患者の静脈血栓閉塞症の予防を目的とした電子警告システムは,今後より広い範囲で導入されることになると考えられる. -
髄芽腫の若年小児に対する化学療法
Chemotherapy in Young Children with Medulloblastoma若年小児の髄芽腫は予後が不良である.さらに,頭部放射線療法により,生存児では認知機能に障害が生じることが多い.この研究では,強化化学療法単独で治療した小児において有望な結果が得られた.
髄芽腫は小児の中枢神経系腫瘍の中でもっともよくみられ,その治療に関しては,何年ものあいだほとんど進展がみられていなかった.この研究がもたらした進展は,とくに転移のない小児にとって有望である. -
膠芽腫に対する放射線療法とテモゾロマイドの併用
Radiotherapy plus Temozolomide for Glioblastoma多形膠芽腫は,成人でもっとも多くみられる原発性の悪性脳腫瘍であり,患者の大半は,手術と放射線による治療にもかかわらず,診断から 2 年以内に死亡する.この試験では,術後の治療法として,放射線療法単独と,放射線療法にアルキル化剤のテモゾロマイドを併用する治療法とを比較した.併用療法は安全であり,死亡リスクは 37%低下した.
先行試験では,放射線療法と化学療法の併用に放射線療法単独を上回る生存上の利益がみられていないことから,とくにこの臨床試験の結果は有望であるといえる.しかし,多形膠芽腫患者の予後は依然として不良である.テモゾロマイドを用いた結果は,脳腫瘍のより優れた治療法への足がかりとなるであろう. -
膠芽腫における MGMT 遺伝子のサイレンシングとテモゾロマイドに対する反応
MGMT Gene Silencing and the Response to Temozolomide in Glioblastomaこの研究は,本誌今週号で報告されている膠芽腫に対するテモゾロマイドの無作為試験と対になっており,膠芽腫で,DNA 修復遺伝子 MGMT(O6-メチルグアニン‐DNA メチルトランスフェラーゼ)のプロモータのメチル化状態が明らかにされた.プロモータのメチル化により MGMT 遺伝子のサイレンシングが起り,テモゾロマイドにより損傷を受けた DNA の修復が阻害される.メチル化された MGMT 遺伝子プロモータをもつ膠芽腫患者は,メチル化されていない MGMT 遺伝子プロモータをもつ患者よりも,テモゾロマイドにより大きな利益を受けた.
MGMT 遺伝子プロモータのメチル化状態を明らかにすることは,DNA 障害性アルキル化剤による治療への反応の予測因子として,有用である可能性がある.
CLINICAL PRACTICE
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神経心臓性失神
Neurocardiogenic Syncope23 歳の看護師が,受診前 3 ヵ月間の勤務中に失神発作を 5 回起し,検査のために受診している.発作はすべて起立時に起り,その特徴は,1~2 秒間眩暈を感じたあと,突然意識を消失するというものであった.5 回の発作のうち,2 回は転倒して顔面を負傷した.失神は短時間で失禁は伴わなかった.失神後は激しい倦怠感があったが,錯乱はなかった.この患者をどのように評価し,治療すべきであろうか?
MEDICAL PROGRESS
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慢性疾患に伴う貧血
Anemia of Chronic Disease慢性疾患に伴う貧血では,鉄の恒常性の破綻,赤血球前駆細胞の増殖障害,エリスロポエチンの反応の鈍化が起っていることが解明された.これに伴って,新たな治療戦略が提案されている.この総説では,この病態の原因と管理に関する知識の進展について論じている.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
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副腎結節が偶然見付かった女性
A Woman with an Incidentally Discovered Adrenal Nodule59 歳の女性が,結腸膀胱瘻の検査のため腹部コンピュータ断層撮影を受けたところ,偶然,副腎皮質に結節が認められた.2 年前,この女性に軽度の高血圧がみられたが,降圧薬治療ではコントロールが困難であることがわかった.女性は軽度の肥満でもあった.この患者をどのように評価すべきであろうか?