April 29, 1999 Vol. 340 No. 17
慢性腎不全患者におけるエナラプリルによる交感神経活動亢進の抑制
Reduction of Sympathetic Hyperactivity by Enalapril in Patients with Chronic Renal Failure
G. LIGTENBERG AND OTHERS
アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害は,慢性腎不全患者の心血管障害のリスクを低下させる.この効果は,一つには交感神経活動の低下によるものかもしれないと考えられるが,このような作用の直接的な証拠は得られていない.
高血圧症と慢性腎不全を併発し,血漿レニン活性が上昇していた 14 例の患者を対象として,ACE 阻害薬であるエナラプリルの投与前,投与中,および投与後における筋交感神経活動についての検討を行った.また,同様の臨床特性を有する 10 例の別の患者には,カルシウム拮抗薬のアムロジピンによる治療前と治療中に検討を行った.どちらの検討にも,年齢および体重をマッチさせた正常被験者を含めた.
筋交感神経活動の平均値(±SD)は,試験開始時には,対照被験者よりもエナラプリル投与患者群で高かった(19±9 対 35±17 bursts/分,p = 0.004).圧反射曲線,これはニトロプルシドナトリウムとフェニレフリンによる血圧操作によって発現した筋交感神経活動の変化を示したものであるが,患者では,この曲線が右側に移動していたものの,圧反射の感受性は対照被験者と同程度であった(患者と対照被験者のそれぞれで,-2.1±1.9 および -2.7±1.3 bursts/分/mmHg;p = 0.36).交感神経抑制薬であるクロニジンの単回投与によって得られた血圧の下降は,対照被験者よりも患者で大きかった.エナラプリルの治療によって,患者では,血圧と筋交感神経活動(23±10 bursts/分)が正常化し,圧反射曲線は,その感受性が有意に変化することなく,左側に移動したが,これは血圧の正常化を表している(-2.3±1.8 bursts/分/mmHg,p = 0.96).アムロジピンの投与を受けた患者については,この治療で血圧は下降したが,筋交感神経活動は 41±19 bursts/分から 56±14 bursts/分に上昇した(p = 0.02).
慢性腎不全の患者では,交感神経活動の亢進が高血圧に寄与している.ACE の阻害は,高血圧を管理するとともに交感神経の活動亢進を抑制する.