GNAQ 体細胞変異により生じるスタージ–ウェーバー症候群とポートワイン母斑
Sturge–Weber Syndrome and Port-Wine Stains Caused by Somatic Mutation in GNAQ
M.D. Shirley and Others
スタージ–ウェーバー症候群は孤発性の先天性神経皮膚症候群であり,三叉神経の眼神経枝が分布する部位の皮膚にみられるポートワイン母斑,脳軟膜・脈絡膜の静脈性毛細血管の異常,緑内障,てんかん発作,脳卒中,知的障害を特徴とする.血管発生を阻害する体細胞モザイク変異によりスタージ–ウェーバー症候群とポートワイン母斑の両方が生じ,重症度と症状の範囲は変異がどの発達段階で生じたかによって決まる,という仮説が立てられている.これまでにそのような変異は同定されていない.
スタージ–ウェーバー症候群を有する被験者 3 例から,病変組織と見た目上正常な組織のペア検体を採取し,DNA の全ゲノム配列決定を行った.スタージ–ウェーバー症候群とポートワイン母斑のいずれかを有する被験者と,いずれも有しない被験者(対照)50 例から得た 97 検体について,単位複製配列決定と SNaPshot 解析を用いて体細胞モザイク変異の有無を調査し,その変異が下流シグナル伝達に及ぼす影響を,関連エフェクターに対するリン酸化特異的抗体とルシフェラーゼレポーター分析を用いて検討した.
スタージ–ウェーバー症候群を有する被験者の 88%(26 例中 23 例)と見た目上非症候性のポートワイン母斑を有する被験者の 92%(13 例中 12 例)から得た病変組織検体の GNAQ には,非同義一塩基変異体(p.Arg183Gln をコードする c.548G→A)が認められたが,関連のない脳血管奇形を有する被験者 4 例から得た病変組織検体と対照 6 例から得た検体では認められなかった.病変組織の変異アレル保有率は 1.0~18.1%であった.形質転換した変異 Gαq の発現時には,細胞外シグナル制御キナーゼ活性が中等度に上昇した.
スタージ–ウェーバー症候群とポートワイン母斑は,GNAQ の体細胞活性化変異により引き起こされる.今回の知見から,長年の仮説が裏付けられた.(米国国立衛生研究所,治療法を望むハンターの夢財団から研究助成を受けた.)