経皮的冠血行再建術時の血小板糖蛋白 IIb/IIIa 受容体遮断と低用量ヘパリン
PLATELET GLYCOPROTEIN IIb/IIIa RECEPTOR BLOCKADE AND LOW-DOSE HEPARIN DURING PERCUTANEOUS CORONARY REVASCULARIZATION
THE EPILOG INVESTIGATORS
血小板糖蛋白 IIb/IIIa 受容体をアブシキシマブ(abciximab,血小板糖蛋白 IIb/IIIa 受容体に対するモノクローナル抗体の Fab フラグメント)で遮断することで,高リスクの冠動脈形成術または冠動脈粥腫切除術を受ける患者の虚血性の合併症を減少させることが示されているが,出血性の合併症を増加させる.この治療の広範囲への適用可能性は,とくに出血リスクが観察されていることからも不明である.
前向き二重盲検臨床試験において,69 ヵ所の施設で緊急または待期的経皮的冠血行再建術を受ける患者を無作為割付けして,アブシキシマブ+標準用量の体重補正ヘパリン(初回ボーラス投与量 100 単位/kg 体重);アブシキシマブ+低用量体重補正ヘパリン(初回ボーラス投与量 70 単位/kg 体重);またはプラセボ+ 標準用量体重補正ヘパリンを投与した.主要有効性エンドポイントは,無作為化 30 日以内の全死因死亡,心筋梗塞,緊急血行再建術とした.
最初の中間分析を行った時点,すなわち予定登録患者 4,800 人中 2,792 人が登録された時点で試験を終了させた.30 日の時点での複合イベント発生率は,プラセボ+標準用量ヘパリンに割付けされた群では 11.7%; アブシキシマブ+低用量ヘパリンに割付けされた群では 5.2%(ハザード比,0.43;95%信頼区間,0.30~0.60;p<0.001);アブシキシマブ+標準用量ヘパリンに割付けされた群では 5.4%(ハザード比,0.45;95%信頼区間,0.32~0.63;p<0.001)であった.軽度の出血はアブシキシマブ+標準用量ヘパリンを投与した患者により高頻度に認められたものの,大出血のリスクには群間に差を認めなかった.
経皮的冠血行再建術を受ける患者では,低用量,体重補正ヘパリンとともに投与したアブシキシマブによる血小板糖蛋白 IIb/IIIa 受容体の阻害により,出血のリスクを増加させることなく急性虚血性合併症のリスクが著しく低下する.