神経線維腫症 1 型および悪性骨髄性疾患を有する小児の骨髄細胞における NF1 遺伝子のホモ接合体不活化
HOMOZYGOUS INACTIVATION OF THE NF1 GENE IN BONE MARROW CELLS WITH NEUROFIBROMATOSIS TYPE 1 AND MALIGNANT MYELOID DISORDERS
L. SIDE AND OTHERS
神経線維腫症 1 型の若年小児における悪性骨髄性疾患のリスクは,正常リスクの 200~500 倍である.神経線維腫症 1 型(NF1)遺伝子は,Ras 蛋白によって変換されるシグナルをネガティブに制御する蛋白であるニューロフィブロミンをコードしている.遺伝的および生化学的データは,NF1 は未熟骨髄細胞において腫瘍抑制遺伝子として作用するという仮説を支持するが,両 NF1 対立形質の不活性化は,神経線維腫症 1 型患者からの白血病細胞では証明されていない.
in vitro 転写翻訳系を用いて,神経線維腫症 1 型と骨髄性疾患を有する患児 18 人の骨髄標本を,蛋白の切断を引き起す NF1 変異の有無に関してスクリーニングした.患児のゲノム DNA の直接シークエンス法により変異を確認し,家族性神経線維腫症 1 型の場合は,罹患した親のゲノム DNA についても行った.
18 人中 9 人の標本には異常なペプチド断片が含まれており,このうち 8 人の標本に NF1 遺伝子の切断的変異を認めた.8 人中 5 人の骨髄標本では,正常な NF1 対立形質は存在しなかった.家族性神経線維腫症 1 型の各患児について,罹患した親の DNA に同じ変異が検出された.
NF1 遺伝子の両対立形質は,一部の神経線維腫症 1 型患者の白血病細胞では不活化されている.NF1 は未熟な骨髄細胞において腫瘍抑制遺伝子として機能するように思われる.