保険料の自己負担と心筋梗塞患者における救急要請の遅れとのあいだには関連はない
ABSENCE OF ASSOCIATION BETWEEN INSURANCE COPAYMENTS AND DELAYS IN SEEKING EMERGENCY CARE AMONG PATIENTS WITH MYOCARDIAL INFARCTION
D.J. MAGID AND OTHERS
救急治療に対して自己負担を要求すれば,「不適切な」救急受診を減らし,費用は抑制されると思われる.しかし,そうすることで患者が救急治療を求めるのが遅れれば,有害な転帰をもたらす可能性がある.そのような要求が,治療要請の遅れに関連するか否かを明らかにするため,われわれは,保険料の自己負担が要求されていた心筋梗塞患者と,要求されていなかった心筋梗塞患者について,症状発現から病院到着までの時間を調査した.
患者全員が単一の健康維持機構(HMO)に登録しており,1989~94 年のあいだにワシントン,キング郡の 19 病院中の一つに心筋梗塞の症状のために来院した.健康保険が救急部門治療に対する患者の一部負担(範囲,25~100 ドル)を要求としたのは患者 602 人で,要求しなかった患者は 729 人であった.来院までの時間に関するデータは,救急車および病院の記録を再調査して得た.
症状発現から病院到着までの時間の中央値は,年齢,性別,人種を補正すると,患者の一部負担群で 135 分,負担免除群で 137 分であった(差に関する 95%信頼区間,-19~+16 分).患者の一部負担の要求の有無と,暦年,収入,教育水準,心既往歴,または臨床症状で補正後の病院到着時間とのあいだに有意な関係を認めなかった.何人かの患者は,一部負担の要求に関して知らなかった可能性があるため,われわれは,同じ状況で救急部門に以前運ばれたことがある患者のデータに関するサブグループ分析 ― すなわち,一部負担について知っている可能性が高い患者の分析を実施した.この分析でも,患者の一部負担と治療要請の遅れとのあいだに有意な関連を示さなかった.
この HMO では,個人的に保険加入している患者にとって,救急医療に対するもっとも控えめな固定額の患者一部負担の要求があっても,心筋梗塞に対する治療要請の遅れにはいたらなかった.