原発性硬化性胆管炎に対するウルソジオール
URSODIOL FOR PRIMARY SCLEROSING CHOLANGITIS
K.D. LINDOR
原発性硬化性胆管炎患者にとって,満足のゆく治療法はない.ウルソジオール(ウルソデオキシコール酸)は,別の胆汁うっ滞性肝疾患である原発性胆汁性胆管炎の患者に有効である.
1989 年 5 月から 1995 年 7 月にかけて,ウルソジオール(13~15 mg/kg 体重/日,分服)をプラセボと比較する無作為化二重盲検試験において,記載のしっかりした原発性硬化性胆管炎患者 105 人を登録した.主要転帰は治療失敗までの期間とし,失敗の定義は,死亡,肝移植,(4 段階中)2 段階の組織学的進行または肝硬変への進展,静脈瘤・腹水・脳症のいずれかの発症,血清中ビリルビン濃度が持続的に 4 倍以上,疲労または瘙痒の顕著な悪化,薬剤に対する耐容不能,試験からの自発的な離脱とした.
3 ヵ月間以上追跡しえた,各群 51 人のデータを分析した.追跡期間の中央値は 2.2 年であった.治療失敗までの期間に,群間に有意差は認められなかった(ウルソジオール群における治療失敗の相対リスク,1.01;95%信頼区間,0.6~1.7).追跡調査の最初の 2 年間に,治療失敗は,プラセボ群では 32 人中 17 人(53%),ウルソジオール群では 31 人中 16 人(52%)に認められた.初期疾患の患者における,治療失敗までの期間と,肝移植までの期間にも差を認めなかった.ウルソジオールにより,1 年および 2 年の時点での,血清中のアルカリホスファターゼ,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ,ビリルビン,アルブミンの各濃度が改善したが,プラセボでは改善しなかった.
原発性硬化性胆管炎と確定診断された患者集団において,ウルソジオールによる臨床的利益は得られなかった.