November 6, 1997 Vol. 337 No. 19
人工股関節全置換術後の血栓塞栓合併症の予防に対する遺伝子組換え型ヒルジンと低分子量ヘパリンとの比較
A COMPARISON OF RECOMBINANT HIRUDIN WITH A LOW-MOLECULAR-WEIGHT HEPARIN TO PREVENT THROMBOEMBOLIC COMPLICATIONS AFTER THR
B.I. ERIKSSON AND OTHERS
人工股関節全置換術を受ける患者は血栓塞栓合併症のリスクが高い.トロンビンの特異的阻害剤である遺伝子組換え型ヒルジン(デシルジン)は,抗血栓療法における代表的な新規開発品である.われわれは,初回の人工股関節全置換術を受ける患者の血栓塞栓合併症の予防に対するデシルジンの有効性と安全性を,低分子量ヘパリン(エノキサパリン)と比較した.
無作為二重盲検的に割付けした治療をいずれも術前に開始した:エノキサパリンは手術前の夕方に投与,デシルジンは手術開始前 30 分以内に投与した.デシルジンの用量は 15 mg を 1 日 2 回皮下投与で,エノキサパリンの用量は 40 mg を 1 日 1 回皮下投与であった.治療期間は 8~12 日であった.深部静脈血栓症は治療期間終了時に両下肢静脈造影によって確認し,深部静脈血栓症の臨床徴候が認められた場合にはそれより前に実施した.
欧州 10 ヵ国の 31 施設において,適格患者 2,079 例を無作為割付けしてデシルジンまたはエノキサパリンを投与した.1,587 例を有効性の主要解析の対象とした.デシルジン群では,エノキサパリン群と比較して,近位深部静脈血栓症の発生率が有意に低く(4.5% 対 7.5%,p=0.01;リスクの相対的減少,40.3%),深部静脈血栓症の総発生率も有意に低かった(18.4% 対 25.5%,p=0.001;リスクの相対的減少,28.0%).安全性プロファイルは 2 群で同様であった.
人工股関節全置換術の 30 分前に投与するデシルジンは,エノキサパリンよりも深部静脈血栓症の予防に有効である.