November 6, 1997 Vol. 337 No. 19
肛門癌の原因としての性的伝播感染症
SEXUALLY TRANSMITTED INFECTION AS A CAUSE OF ANAL CANCER
M. FRISCH AND OTHERS
肛門癌の発生率はここ 10 年のあいだに,とくに女性において増加した.原因となっている危険因子を特定するため,われわれは,デンマークとスウェーデンにおいて人口に基づくケース・コントロール試験を実施した.
1991~94 年のあいだに浸潤性,または in situ 肛門癌と診断された女性 324 人と男性 93 人,そして直腸の腺癌対照者 534 人および一般対照者 554 人に電話インタビューを行った.インタビューは肛門癌について考えうる広い範囲の危険因子を網羅していた.ロジスティック回帰によりオッズ比を計算した.ポリメラーゼ連鎖反応により,肛門癌組織標本と直腸腺癌サンプル中のヒトパピローマウイルス(HPV)DNA の有無を調べた.
多変量解析により,男女とも性的乱交の程度と肛門癌のリスクとのあいだに,一貫した統計学的に有意な関連が明らかになった.女性(p<0.001),男性(p<0.05)ともに異性パートナー数の増加と,多様な性病の高い罹患率のあいだには有意な相関傾向があった.女性では,とくに 30 歳未満での肛門性交の受け入れと,パートナーの性病も,リスクの増加に関連した(オッズ比はそれぞれ,3.4 および 2.4).同性愛接触の経験があると報告したのは,肛門癌の男性の 15%に対し,対照者ではゼロであった(p<0.001).高リスク型の HPV,とくに HPV-16 は,調べた肛門癌標本の 84%に検出されたが,調べた直腸腺癌標本はすべて HPV 陰性であった.
われわれの試験は,性的伝播感染症が肛門癌を引き起すという強い証拠を提供する.肛門癌組織標本の大多数に高リスク型の HPV,とくに HPV-16(子宮頸癌を引き起すことが知られている)が存在することは,ほとんどの肛門癌が予防できる可能性があることを示唆している.