August 28, 1997 Vol. 337 No. 9
閉経後女性の高コレステロール血症に対するエストロゲンとプロゲスチンの併用とシンバスタチンとの比較
ESTROGEN AND PROGESTIN COMPARED WITH SIMVASTATIN FOR HYPERCHOLESTEROLEMIA IN POSTMENOPAUSAL WOMEN
G.M. DARLING, J.A. JOHNS, P.I. MCCLOUD, AND S.R. DAVIS
閉経後エストロゲン療法は,血清脂質濃度が正常な女性の血清リポ蛋白に好ましい効果を及ぼすが,エストロゲンとプロゲスチンの併用療法が高コレステロール血症女性のリポ蛋白に及ぼす効果は明らかにされておらず,従来の脂質低下剤療法の効果との直接比較もなされていない.
無作為化クロスオーバー試験において,空腹時コレステロール血清値が 25 mg/dL 以上の閉経後女性 58 人を調べた.各女性にシンバスタチン(10 mg 毎日投与)を 8 週間投与し,その後閉経後ホルモン療法(抱合ウマエストロゲン 1.25 mg までを,酢酸メドロキシプロゲステロン 5 mg とともに毎日投与)を 8 週間行った.両治療法のあいだに 8 週間の休薬期間を設けた.
ベースラインの平均(±SD)コレステロール値は以下の通りであった:総コレステロール,305±39 mg/dL;高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール,62±19 mg/dL;そして低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール,217±39 mg/dL.総コレステロールに関して,ホルモン療法による平均減少は 14%(95%信頼区間,11~16%),シンバスタチンによる平均減少は 26%(95%信頼区間,23~29%)であった.LDL コレステロールに関して,ホルモン療法による平均減少は 24%(95%信頼区間,20~28%)で,シンバスタチンでは 36%(95%信頼区間,32~40%)であった.シンバスタチンの効果は,ホルモン療法の効果より有意に大きかった(p<0.001).HDL コレステロールはホルモン療法(平均増加,7%;95%信頼区間,2~12%)およびシンバスタチン(平均増加,7%;95%信頼区間,4~10%)で同様に増加した.トリグリセリド値はホルモン療法では増加したが(平均増加,29%;95%信頼区間,15~42%),シンバスタチンでは減少した(平均減少,14%;95%信頼区間,8~20%).Lp(a) リポ蛋白はホルモン療法によって減少したが(平均減少,27%;95%信頼区間,20~34%),シンバスタチンでは減少しなかった.
閉経後の高コレステロール血症女性では,エストロゲン+プロゲスチン療法はリポ蛋白値に有益な効果を及ぼす.ホルモン療法は,とくにトリグリセリド値が正常な女性ではシンバスタチン治療の有効な代用法となる可能性がある.