August 28, 1997 Vol. 337 No. 9
魚の病原体である Streptococcus iniae による侵襲的感染症
INVASIVE INFECTIONS DUE TO A FISH PATHOGEN, STREPTOCOCCUS INIAE
M.R. WEINSTEIN AND OTHERS
Streptococcus iniae は,水産養殖場で大発生し,侵襲的疾患を起しうる魚の病原体である.大トロント地域で 1995~96 年の冬に,そのような養殖場からの鮮魚を最近取り扱った人に 4 例の侵襲的 S. iniae 感染症の集団発生があった.
われわれは,ヒト S. iniae 感染症の症例に関して,プロスペクティブおよびレトロスペクティブな地域調査を実施した.単離菌の大規模サンプルを採取するために,水産養殖場の魚の表面から得た培養菌を検査した.感染したテラピア(oreochromis 種)の脳からさらに単離菌を得た.すべての単離菌の特徴をパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)によって明らかにした.
われわれの調査により,1 年のあいだに,侵襲的 S. iniae 感染症患者 9 人を確認した(手の蜂巣炎 8 人および心内膜炎 1 人).患者全員が,生きている,または死んだばかりの魚を取り扱っており,8 人では経皮損傷を認めた.魚 9 匹中 6 匹はテラピアで,これはアジア人の食事には一般的に用いられる魚である.さらに別の 13 例の S. iniae 単離菌(2 例はヒトから,11 例は感染したテラピアから)を通常,無菌的な場所から得た.患者 9 人から得た単離菌は PFGE でそれぞれが識別不可能で,他の臨床単離菌と深く関連していた.魚の表面からの 42 例の調査単離菌のあいだには実質的な遺伝的相違を認めたが,単離菌 10 例では,S. iniae 感染症患者からの単離菌と PFGE パターンが一致した.
S. iniae は,水産養殖場で養殖された新鮮な魚の取り扱い中の皮膚損傷後に侵襲的感染症を引き起しうる.われわれは,ヒトおよび魚の双方に侵襲的疾患を引き起す S. iniae のクローンを特定した.