September 11, 1997 Vol. 337 No. 11
冠動脈バイパスグラフト閉塞に対するステント留置とバルーン血管形成術との比較
STENT PLACEMENT COMPARED WITH BALLOON ANGIOPLASTY FOR OBSTRUCTED CORONARY BYPASS GRAFTS
M.P. SAVAGE AND OTHERS
冠動脈バイパス手術後にみられる伏在静脈グラフトの狭窄の治療はむずかしい挑戦である.本試験の目的は,伏在静脈グラフトの閉塞疾患患者における,臨床および血管造影的転帰に及ぼすステント留置およびバルーン血管形成術の効果を比較することであった.
大動脈冠動脈–静脈バイパスグラフトにおける新規病変患者 220 人を無作為割付けして,Palmaz–Schatz ステントの留置または標準的なバルーン血管形成術を行った.割付けた手術のさいとその 6 ヵ月後に冠動脈血管造影を行った.
血管形成術群の患者と比較すると,ステント留置群の患者は,主要な心臓合併症もなく,狭窄が血管直径の 50%未満へと減少することとして定義する手術有効率が高かった(92% 対 69%,p<0.001)が,出血性合併症はより発生率が高かった(17% 対 5%,p<0.01).ステント群の患者は,手術直後の血管直径の平均(±SD)増加がより大きく(1.92±0.30 mm,これに対し,血管形成術群では 1.21±0.37 mm;p<0.001),6 ヵ月後の補正した血管直径の平均増加がより大きかった(0.85±0.96 対 0.54±0.91 mm,p = 0.002).ステント群では患者の 37%に再狭窄が起り,血管形成術群では患者の 46%に起った(p = 0.24).死亡,心筋梗塞,バイパス再手術,または標的病変の再血管形成を免れたことを指標とする転帰は,ステント群のほうが有意に良好であった(73% 対 58%,p = 0.03).
バルーン血管形成術と比較すると,選択した静脈バイパスグラフト病変のステント留置は,優れた手術的転帰を示し,血管直径の増加が大きく,主な心臓イベントも減少した.しかし,本試験の主要エンドポイントである血管造影で確認される再狭窄率に有意な利益はなかった.