The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

June 15, 2000 Vol. 342 No. 24

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

クロピドグレルに関連した血栓性血小板減少性紫斑病
Thrombotic Thrombocytopenic Purpura Associated with Clopidogrel

C.L. BENNETT AND OTHERS

背景

抗血小板薬のクロピドグレル(Clopidogrel)は,チエノピリジン(Thienopyridine)の新規の誘導体であり,その作用機序および化学構造はチクロピジンと類似している.チクロピジン関連血栓性血小板減少性紫斑病の発症率は,投与患者 1,600 ~ 5,000 人当り 1 人と推定されているが,クロピドグレル関連血栓性血小板減少性紫斑病については,第 III 相臨床試験およびコホート研究においてクロピドグレルの治療を受けて慎重にモニターされた 20,000 例の患者では 1 例も観察されなかった.チクロピジンの使用には,血栓性血小板減少性紫斑病および他の有害作用との関連が認められているために,臨床の現場では,チクロピジンからクロピドグレルへの切り替えがかなり進んでいる.そして,これまでに 300 万人を超える患者がクロピドグレルの投与を受けている.今回,われわれは,クロピドグレルの治療中あるいは治療後すぐに血栓性血小板減少性紫斑病が発症した 11 例の患者について,その臨床所見と臨床検査の結果を報告する.

方 法

これらの 11 例の患者は,血液バンクの医学管理責任者(3 例の患者),血液専門医(6 例),およびクロピドグレルの製造会社(2 例)による自主監視によって同定された.

結 果

血栓性血小板減少性紫斑病が発症する前に患者に投与されたクロピドグレルの投与期間は,11 例の患者のうちの 10 例までが 14 日間以下であった.11 例の患者のうちの 10 例は血漿交換の処置に反応を示したが,そのうちの 2 例は臨床上の改善が得られるまでに 20 回以上の血漿交換が必要であった.また,2 例については,クロピドグレルの非投与中に血栓性血小板減少性紫斑病が再発した.さらに,1 例の患者については,血栓性血小板減少性紫斑病の診断後ただちに血漿交換が行われたにもかかわらず死亡した.

結 論

血栓性血小板減少性紫斑病は,クロピドグレルの治療開始後にも発症する可能性があり,治療開始後 2 週間以内に発症することが多い.したがって,医師は,クロピドグレルの治療を開始するさいには,この症候群が発症する可能性を認識しておくべきであろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1773 - 7. )