October 26, 2000 Vol. 343 No. 17
カジノで起きた心停止に対する警備員による迅速除細動の転帰
Outcomes of Rapid Defibrillation by Security Officers after Cardiac Arrest in Casinos
T.D. VALENZUELA AND OTHERS
医療関係専門職員や救急救命士以外の人々による自動体外除細動器の使用は,米国心臓協会とその他の組織団体によって推奨されている.しかしながら,病院外で起った心停止に対して,医療従事者以外の人々によって除細動器が使用されたときの転帰に関するデータはほとんど得られていない.
カジノで突然心停止を起した一連の症例を対象として,前向きの検討を行った.カジノの警備員は,自動体外除細動器を使用する訓練を受けていた.カジノでの除細動器の保管場所は,心臓発作から最初の除細動を行うまでの目標時間を 3 分以下にできるような場所が選ばれた.われわれのプロトコールでは,(可能であれば)最初に除細動を行い,続いて手動による心肺蘇生法(CPR)を行うよう定めていた.主要転帰は,生存して退院することとした.
最初に記録された心リズムが心室細動であった 105 例の患者に対して,自動体外除細動器が使用された.これらの患者のうちの 56 例(53%)は生存して病院から退院した.心臓発作を目撃された 90 例(86%)の患者について検討すると,臨床的に意味のある時間としては,心臓発作から除細動器を胸に当るまでの平均(± SD)時間が 3.5 ± 2.9 分間,心臓発作から 1 回目の除細動ショックを与えるまでの平均(± SD)時間が 4.4 ± 2.9 分間,心臓発作から医療関係専門職員の到着までの平均(± SD)時間が 9.8 ± 4.3 分間であった.生存率は,心臓発作が目撃されてから 3 分以内に 1 回目の除細動が行われた患者では 74%,3 分が経過してから 1 回目の除細動が行われた患者では 49%であった.
病院外で心室細動による心停止が起った場合,医療従事者以外の人々による自動体外除細動器を用いた迅速除細動によって生存率を高めることができる.そして,もっとも高い生存率を得るためには,心臓発作から除細動までの時間が 3 分を超えないようにすることが必要不可欠である.