October 26, 2000 Vol. 343 No. 17
ある米国の航空会社による自動体外除細動器の使用
Use of Automated External Defibrillators by a U.S. Airline
R.L. PAGE AND OTHERS
旅客機に搭乗している乗客が心室細動を起した場合には,救急医療と除細動を受けるのが遅れるために,生還するというのはまれである.
1997 年に,米国の主要航空会社のうちの 1 社が,その自社飛行機に自動体外除細動器を備えつけ始めた.客室乗務員には,除細動器を使用できるように訓練を行い,乗客が意識を失ったり,脈拍や呼吸が停止した場合には除細動器を使用させた.また,この自動体外除細動器は,このような状況以外にも医学上の緊急事態の監視装置としても使用されたが,通常は乗客として乗り合わせた医師の指示の下で使用された.除細動器が適切に使用されたかどうかを評価するために,除細動器の使用ごとに記録された心電図を 2 名の不整脈の専門家が分析した.今回,われわれは,1997 年 6 月 1 日~1999 年 7 月 15 日までに除細動器が使用された 200 例のすべてのデータについて解析を行った.
自動体外除細動器は,意識消失が記録されていた 99 例を含めて,200 例の患者に使用されていた(機内での使用が 191 例,離着陸空港ターミナルでの使用が 9 例).心電図のデータは 185 例の患者のものを利用することができた.心電図に心室細動が記録された 14 例の患者については,そのすべての患者に対して,カウンターショックを与えるように除細動器から指示されていた.残りの心室細動が記録されていなかった患者については,除細動器からはカウンターショックを与えないような指示がだされていた(心室細動の同定に対する除細動器の感度および特異度,100%).1 回目のカウンターショックで心臓の除細動に成功した患者は 13 例であった(1 例は家族の要望によって除細動を中止した).この自動体外除細動器によるカウンターショックを受けた後に,生存して病院から退院した患者は 40%であった.死亡または心停止後に蘇生した患者は合計で 36 例であった.意識のある乗客に監視装置として使用した場合,自動体外除細動器の使用による合併症は全く発現しなかった.
旅客機の機内での自動体外除細動器の使用は有効であり,心室細動が洞性リズムに回復した後,生存して病院を退院する割合を大きく向上させる.また,心室細動が発現していない状態で自動体外除細動器を監視装置として使用する場合には,合併症が発症するということは考えにくい.