進行した慢性心不全の患者を対象としたβ遮断薬ブシンドロールの試験
A Trial of the Beta-Blocker Bucindolol in Patients with Advanced Chronic Heart Failure
THE BETA-BLOCKER EVALUATION OF SURVIVAL TRIAL INVESTIGATORS
βアドレナリン作用性受容体の拮抗薬は,軽度から中等度の慢性心不全の患者の病的状態を軽減させ,死亡を減少させるが,さらに進行した心不全の患者の生存に対する効果はわかっていない.
ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類で III 度(患者の 92%)または IV 度(患者の 8%)と判定され,左室駆出率が 35%以下であった患者,合計で 2,708 例を,ブシンドロール(Bucindolol)(1,354 例)またはプラセボ(1,354 例)の二重盲検治療に無作為に割付け,全死因死亡を主要エンドポイントと設定した追跡調査を行った.
データ・安全性監視委員会によって,7 回目の中間解析後にこの試験の中止が勧告された.勧告を受けた時点の死亡率には 2 群間に有意な差は認められなかった(補正なし p = 0.16).ここで報告する結果は,試験終了時に完了していた追跡調査(平均,2.0 年間)をもとにしたものである.死亡患者の総数は,プラセボ群が 449 例(33%),ブシンドロール群が 411 例(30%)であった(補正あり,p = 0.13).副次的エンドポイントとして設定した心血管系の原因による死亡のリスクは,心臓移植や死亡のリスクと同様に,ブシンドロール群で低かった(ハザード比,0.86;95%信頼区間,0.74~0.99).また,患者の部分集団の解析では,非黒人患者において生存の有益性が認められた.
NYHA の心機能分類で III 度および IV 度の心不全を有する人口統計学的に多様な患者群において,ブシンドロールは,全生存に関しては有意な有益性が認められないという結果であった.