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January 18, 2001 Vol. 344 No. 3

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ムコ多糖症 I に対する酵素補充療法
Enzyme-Replacement Therapy in Mucopolysaccharidosis I

E.D. KAKKIS AND OTHERS

背景

ムコ多糖症 I は,α-L-イズロニダーゼの酵素欠損が原因となって発症するリソソーム蓄積症の一つの病型である.われわれは,この疾患の患者において,遺伝子組換え型のヒトα-L-イズロニダーゼによる酵素補充療法の効果について評価した.

方 法

ムコ多糖症 I の 10 例の患者(年齢,5~22 歳)に対して,体重当り 125,000 単位/kg 用量の組換え型ヒトα-L-イズロニダーゼを 1 週間に 1 回,静脈内投与する治療を 52 週間にわたって実施した.患者の評価は,治療開始時と治療 6,12,26,および 52 週目に,詳細な臨床身体所見,腹部および頭部の磁気共鳴画像(MRI)検査,心エコー検査,関節可動域の測定,睡眠ポリグラフィー検査,臨床検査値の評価,白血球のα-L-イズロニダーゼ活性の測定,およびグリコサミノグリカンの尿中排泄によって行った.

結 果

肝脾腫はすべての患者において有意な縮小がみられ,肝臓は 8 例において 26 週目までに体重および年齢に対して正常な大きさに戻っていた.思春期前の 6 例については,身長および体重の成長率が,52 週目の時点においてそれぞれ平均値で 85%および 131%増加した.肩の屈曲および肘の伸張に関しては,その平均最大可動域が有意に拡がった.睡眠中に発現した無呼吸および低呼吸のエピソード数にも 61%の減少が認められた.また,ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類による心機能の評価では,すべての患者において 1 段階あるいは 2 段階の改善が得られた.さらに,グリコサミノグリカンの尿中排泄量も治療が 3~4 週間終了した後に減少していた;治療 52 週目の時点における平均減少率は治療開始時の値の 63%であった.その一方で,5 例には投与中に一過性の蕁麻疹が発現し,4 例の血清中にはα-L-イズロニダーゼに対する抗体が検出された.

結 論

ムコ多糖症 I の患者に対する遺伝子組換え型のヒトα-L-イズロニダーゼの治療は,肝臓内へのリソソーム蓄積を減少させるとともに,この疾患によって現れるいくつかの臨床症状を改善させる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 182 - 8. )