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January 18, 2001 Vol. 344 No. 3

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ネズミチフス血清型の Salmonella enterica の監視における分子亜型分類の使用
Use of Molecular Subtyping in Surveillance for Salmonella enterica Serotype Typhimurium

J.B. BENDER AND OTHERS

背景

ネズミチフス血清型の Salmonella entericaは,米国でサルモネラ症の患者から分離されるもっとも一般的な血清型であるために,この血清型によるサルモネラ症の異常な集積や集団発生を検出するのが困難になっている.ミネソタ州保健局では,公衆衛生の立場からのネズミチフス血清型の S. enterica の監視において,分子亜型分類が有用であるかどうかを調べるために,分離株のパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)をルーチンに行い始めた.

方 法

臨床検査施設から保健局に提出されたネズミチフス血清型の S. enterica の分離株すべてにおいて,1994 年から PFGE による亜型分類が開始された.そして,感染源の可能性に関する患者の面接には,標準的な質問票が用いられた.

結 果

1994 年から 1998 年までに,ミネソタ州保健局にネズミチフス血清型の S. enterica による感染症は 998 例報告された(100,000 人年あたり 4.4 例).これらの患者から分離された 958 株(96%)に対して PFGE による検査が行われ,174 種類の泳動パターンが同定された.感染源の共通性から 16 件の集団発生が確認され,症例数は 154 例であった. PFGE による亜型分類によって,施設内の少数例に生じた 10 件の集団発生を確認することができた.より規模の大きな,地域ベースの集団発生 6 件について,そのうちの 4 件は,PFGE による亜型分類を行わなければおそらく識別することができなかっただろうと考えられた.この 4 件には,分離株で確認された 154 例のうちの 96 例(62%)が含まれていた.抗菌薬の感受性試験を行った分離株 209 株のうち,56 株(27%)が 5 剤以上の抗菌薬に耐性化していた.多剤耐性分離株は PFGE パターンが他とは異なっていた.

結 論

PFGE により,ネズミチフス血清型の S. enterica の分子亜型分類をルーチンに行うことは,この感染症の集団発生に対する検出能を向上させ,多剤耐性株の同定にも役立つ.ルーチンの分子亜型分類と公衆衛生当局間の迅速な情報伝達を組み合せることによって,ネズミチフス血清型の S. enterica による感染症の監視体制を改善することができる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 189 - 95. )