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March 8, 2001 Vol. 344 No. 10

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重症パーキンソン病に対する胎児ドパミン作動性ニューロンの移植
Transplantation of Embryonic Dopamine Neurons for Severe Parkinson' s Disease

C.R. FREED AND OTHERS

背景

パーキンソン病患者には,ヒトの胎児ドパミン作動性ニューロンの脳内への移植が有益であることが,非盲検臨床試験において証明されている.しかしながら,比較試験では,この介入が偽手術よりも有効か否かについての結論は得られていない.

方 法

34~75 歳の重症パーキンソン病(平均罹病期間,14 年間)の患者 40 例を,神経細胞の移植または偽手術に無作為に割付けた; すべての患者に対して,二重盲検法による 1 年間の追跡調査を行った.移植レシピエントには,4 個の胎児から培養した中脳組織を両側の被殻に植え込んだ.偽手術の患者には,頭蓋にドリルで穴を開けたが,硬膜は開かなかった.主要転帰は,1 年目の時点におけるパーキンソン病の重症度の変化を,-3.0~3.0 の尺度でスコア化した患者の主観的な総合評価とした.なお,スコアの負の値は症状の悪化を示し,正の値は改善を示している.

結 果

改善または悪化の総合評価尺度による 1 年目の時点の平均(±SD)スコアは,移植群が 0.0 ± 2.1,偽手術群が-0.4±1.7 であった.比較的若年齢(60 歳以下)の患者については,パーキンソン病の標準的検査を朝の服薬前に実施したときの結果から,移植群が偽手術群と比較して有意に改善していることが示された(パーキンソン病総合評価尺度 [Unified Parkinson's Disease Rating Scale:UPDRS] のスコアでは p = 0.01; Schwab と England のスコアでは p = 0.006).移植群の高齢患者には,有意な改善は認められなかった.移植群では,陽電子放射断層撮影法(PET)における 18F-フルオロドパの取込みの増加,または剖検により示される移植ニューロン線維の成長が,移植群の患者 20 例中 17 例において認められた.また,移植を受けた患者では,移植 1 年目の改善が認められたあとに,ジストニアとジスキネジアがその 15%に再発し,これらはレボドパの投与量を減量したり投与を中止したあとであっても再発した.

結 論

重症パーキンソン病の患者に移植したヒトの胎児ドパミン作動性ニューロンは生着し,その結果として,若年齢の患者ではある程度の臨床有益性が得られるものの,高齢患者には有益性は認められない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 710 - 9. )