September 5, 2002 Vol. 347 No. 10
女性における心血管イベント予防のための歩行と激しい運動の比較
Walking Compared with Vigorous Exercise for the Prevention of Cardiovascular Events in Women
J.E. MANSON AND OTHERS
心血管系疾患の予防において激しい運動と比較したときの歩行の役割については,論争が続いている.少数人種や少数民族の集団に属する女性に関するデータはとくに少ない.
女性健康イニシアティブ観察的研究(Women's Health Initiative Observational Study)において,50~79 歳の閉経後女性 73,743 例を対象に,冠動脈イベントや総心血管イベント発生の予測因子として,総身体活動スコア,歩行,激しい運動や座って過ごす時間を前向きに調査した.ベースラインにおいて参加者は,心血管系疾患や癌の診断は受けておらず,全参加者は身体活動に関する詳細な質問票に回答した.345 件の新たに診断された冠動脈心疾患症例と 1,551 件の総心血管イベントを確認した.
身体活動スコアの増加は,冠動脈イベントと総心血管イベント両者のリスクと,強い段階的な負の関連性を示した.白人女性と黒人女性両群において類似の知見が得られた.代謝当量で測定されたエネルギー消費(MET スコア)が増加する五分位群ごとに,冠動脈イベントの年齢補正相対リスクは,1.00,0.73,0.69,0.68 および 0.47 であった(傾向性に関する P<0.001).多変量解析においても,全 MET スコアと心血管イベントのリスクとのあいだの逆勾配は依然として強かった(補正相対リスクは五分位群の増加順にそれぞれ 1.00,0.89,0.81,0.78 および 0.72;傾向性に関する P<0.001).歩行と激しい運動は,同程度のリスクの減少と関連し,この結果は,人種,年齢,体格指数によって大きく変化しなかった.より早い歩行速度や毎日の座って過ごす時間がより少ないことも,より低いリスクを予測した.
これらの前向き研究のデータは,歩行と激しい運動が共に,人種や民族集団,年齢,体格指数にかかわらず,閉経後女性における心血管イベント発生の実質的減少と関連することを示唆している.座っている時間が長くなることは心血管イベントのリスクの増加を予測する.