April 15, 2004 Vol. 350 No. 16
重症患者における血清遊離コルチゾール濃度の測定
Measurements of Serum Free Cortisol in Critically Ill Patients
A.H. Hamrahian, T.S. Oseni, and B.M. Arafah
ヒト血清中を循環するコルチゾールの 90%以上は蛋白結合型であるため,結合蛋白の変化により,遊離コルチゾール濃度が影響を受けることなく,血清総コルチゾール濃度の測定値が変化する可能性がある.グルココルチコイドの分泌が最大限に刺激されている重症の病態において,コルチゾール結合蛋白量の減少が,血清総コルチゾール濃度と遊離コルチゾール濃度に及ぼす影響について検討した.
性別および年齢が類似した重症患者 66 例と健常ボランティア 33 例で,ベースライン時の血清総コルチゾール,コシントロピン刺激時の血清総コルチゾール,アルドステロン,遊離コルチゾールの濃度を測定した.患者 66 例中,36 例は低蛋白血症で(アルブミン濃度,2.5 g/dL 以下),30 例の血清アルブミン濃度は正常値に近かった(2.5 g/dL 超).
ベースライン時およびコシントロピン刺激時の血清総コルチゾール濃度は,低蛋白血症患者のほうが,血清アルブミン濃度が正常値に近い患者よりも低かった(P<0.001).しかし,ベースライン時の平均(±SD)血清遊離コルチゾール濃度は両患者群で同程度であり(5.1±4.1 μg/dL [140.7±113.1 nmol/L] および 5.2±3.5 μg/dL [143.5±96.6 nmol/L]),対照群の値(0.6±0.3 μg/dL [16.6±8.3 nmol/L])よりも数倍高かった(両方の比較に対する P<0.001).患者 14 例のコシントロピン刺激時の血清総コルチゾール濃度は正常値以下で(18.5 μg/dL [510.4 nmol/L] 以下),その全員が低蛋白血症であった.低蛋白血症患者 14 例を含む患者 66 例すべてにおいて,ベースライン時とコシントロピン刺激時の血清遊離コルチゾール濃度は,正常値ではあるが高めか,正常値を上回った.
重症疾患ではグルココルチコイドの分泌が著しく上昇するが,血清総コルチゾール濃度を測定するだけではその上昇は認識できない.この研究では,低蛋白血症を有する重症患者の 40%近くにおいて,副腎機能が正常であるにもかかわらず,血清総コルチゾール濃度が正常値以下であった.低蛋白血症を有する重症患者における血清遊離コルチゾール濃度の測定は,グルココルチコイド療法の不必要な実施を回避するのに役立つ可能性がある.