筋骨格組織の同種移植片に関連したクロストリジウム感染
Clostridium Infections Associated with Musculoskeletal-Tissue Allografts
M.A. Kainer and Others
同種移植片は,整形外科で再建術に広く利用されている.2001 年には,米国の組織バンクによって,約 875,000 の筋骨格同種移植片が提供された.ある組織バンク(組織バンク A)から汚染された同種移植片の提供を受けた 23 歳の男性が Clostridium sordellii による敗血症で死亡したことを受けて,疾病対策予防センターは,症例発見の強化を含め,組織の摘出,処理,検査に用いる方法に関する調査を開始した.
同種移植片に関連したクロストリジウムの感染例は,1998 年 1 月~2002 年 3 月までのあいだに,移植後 1 年以内に手術部位の培養で感染が確認されたものと定義した.これらの組織について,組織を摘出・処理した組織バンクまで追跡を行った.また,関与したとされる組織バンクで処理された組織について,クロストリジウム感染の感染率とリスク比を推定し,さまざまな組織バンクで用いられている処理法と検査法について再調査を行った.
組織バンク A で処理された同種移植片の移植を受けた患者 14 例を同定した.クロストリジウムの感染率は,組織バンク A のスポーツ医学的組織(腱,大腿骨顆,半月板)の移植を受けた患者で 0.12%,とくに大腿骨顆の移植を受けた患者では 0.36%であった.組織バンク A で処理された組織によるクロストリジウム感染のリスク比の推定値は,ほかの組織バンクの組織と比較して,筋骨格同種移植片,スポーツ医学的組織,腱で非常に大きかった(P<0.001).組織バンク A では,組織の培養を殺芽胞作用のない抗菌液で処理したあとに限って行っていたことから,いくつかの検査結果は偽陰性であったと考えられる.関連が示唆されるドナーの組織は,ほかの解剖学的部位からクロスリジウムや腸内細菌が単離されたり,ほかのレシピエントで感染が報告されたりしたにもかかわらず,出荷されていた.
クロストリジウム感染の原因は,同種移植片移植であることが突き止められた.われわれは,組織移植の安全性を高めるための暫定的な勧告を提案する.組織バンクは,処理・培養法の妥当性を立証すべきである.同種移植片に関連した感染を予防するためには,移植組織の機能に悪影響を及ぼさない滅菌法が必要である.