小児における気道マクロファージ内の炭素と肺機能
Carbon in Airway Macrophages and Lung Function in Children
N. Kulkarni and Others
疫学研究から,小児が炭素粒子を吸入すると肺機能が損なわれることが間接的に示唆されている.本研究は,気道マクロファージの炭素含有量を,化石燃料由来の粒子状物質に対する個々の小児の曝露の指標として用い,この関連性に関する直接的なエビデンスを得ることを目的とした.
喀痰誘発法により健常小児の気道マクロファージを採取し,気道マクロファージに占める炭素の面積を測定した.肺機能はスパイロメトリにより測定した.各小児の自宅またはその近隣における,空気動力学的粒径が 10 μm 未満の一次粒子(PM10)への曝露をモデル化した.線形回帰を用いて,肺胞マクロファージの炭素含有量と,個々の曝露に影響を及ぼす可能性のある変数との関連を評価した.他の原因による肺機能の低下が,気道マクロファージの炭素含有量の増加と関連しているかどうかを検討するため,重症喘息の小児についても検討した.
健常小児 114 例中,64 例(56%)で気道マクロファージの炭素含有量を評価することができた.一次 PM10 が 1.0 μg/cm3 増加すると,気道マクロファージの炭素含有量が 0.10 μm2 増加し(95%信頼区間 0.01~0.18),炭素含有量が 1.0 μm2 増加すると,1 秒量が 17%減少し(95%信頼区間 5.6~28.4%),努力肺活量が 12.9%減少し(95%信頼区間 0.9~24.8%),最大呼気中間流量が 34.7%減少した(95%信頼区間 11.3~58.1%).気道マクロファージの炭素含有量は,喘息小児のほうが健常小児よりも少なかった.
小児における気道マクロファージの炭素含有量と肺機能のあいだには,用量反応関係を伴う負の相関が認められる.肺機能の低下そのものが炭素含有量の増加を引き起すというエビデンスは得られなかった.