初回経皮的冠動脈インターベンション後のストレプトキナーゼ冠動脈内投与
Intracoronary Streptokinase after Primary Percutaneous Coronary Intervention
M. Sezer and Others
初回経皮的冠動脈インターベンション(primary PCI)後には,しばしば微小血管の血流低下がみられる.そうした状況では,in situ の血栓が心筋血流の低下に寄与しているのではないかという仮説を立てた.この仮説を検証するため,初回 PCI 直後の低用量ストレプトキナーゼ冠動脈内投与の効果を評価した.
初回 PCI を受けた患者 41 例を,ストレプトキナーゼ(250 kU)を冠動脈内に投与する群と,追加治療を行わない群に無作為に割り付けた.2 日後,心臓カテーテル検査を再度実施し,圧・温度センサーを備えたガイドワイヤーを用いて冠血行動態エンドポイントを測定した.前壁心筋梗塞の患者では,経胸壁心エコーを用いて冠動脈拡張期血流の減速時間を測定した.6 ヵ月の時点で,血管造影,心エコー検査,テクネチウム 99 m 単光子放射型コンピュータ断層撮影を行った.
PCI 後 2 日の時点で,冠血流予備能(2.01±0.57 対 1.39±0.31),微小血管抵抗指数(16.29±5.06 U 対 32.49±11.04 U),側副血行路指数(0.08±0.05 対 0.17±0.07),平均冠動脈楔入圧(10.81±5.46 mmHg 対 17.20±7.93 mmHg),収縮期冠動脈楔入圧(18.24±6.07 mmHg 対 33.80±11.00 mmHg),拡張期減速時間(828±258 msec 対 360±292 msec)など,微小血管機能のすべての評価項目(平均±SD)で,ストレプトキナーゼ群は対照群よりも有意に優れていた.また,ストレプトキナーゼの冠動脈内投与により,2 日目の補正後の心筋梗塞血栓溶解フレームカウント(色素が冠動脈口から標準化された冠動脈末端部まで移動するのに必要なシネフレーム数)が有意に低下した.しかし,6 ヵ月の時点では,左室の容積や機能に両群間の差を示す所見は認められなかった.
このパイロット試験において,初回 PCI 直後に低用量ストレプトキナーゼを冠動脈内投与することにより,心筋再灌流は改善したが,長期的な左室の容積や機能は改善しなかった.より大規模な臨床試験を行い,これらの知見を解明する必要がある.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00302419)