腎移植におけるアレムツズマブ導入療法
Alemtuzumab Induction in Renal Transplantation
M.J. Hanaway and Others
腎移植レシピエントにおいて,グルココルチコイドを早期に離脱する抗体導入療法を比較した研究はほとんどない.本研究の目的は,免疫学的リスクが高い患者集団と低い患者集団において,アレムツズマブ(alemtuzumab)を含む導入療法を,もっとも一般的に用いられている導入療法と比較することである.
前向き研究において,患者をアレムツズマブ導入療法群と従来の導入療法群(バシリキシマブまたはウサギ抗胸腺細胞グロブリン)に無作為に割り付けた.急性拒絶反応のリスクに基づき患者を層別化した.再移植,ピークまたは現在の既存抗体(panel-reactive antibody:PRA)検査値 20%以上,黒人であることを高リスクと定義した.高リスク患者 139 例に,アレムツズマブ(30 mg 1 回,70 例)またはウサギ抗胸腺細胞グロブリン(4 日間で計 6 mg/kg 体重,69 例)を投与した.低リスク患者 335 例には,アレムツズマブ(30 mg 1 回,164 例)またはバシリキシマブ(4 日間で計 40 mg,171 例)を投与した.全例にタクロリムスとミコフェノール酸モフェチルを投与し,ステロイド早期離脱レジメンとしてグルココルチコイドを 5 日間で漸減中止した.主要エンドポイントは,6 ヵ月と 12 ヵ月の時点で生検により確認された急性拒絶反応とした.安全性・有効性エンドポイントについて患者を 3 年間追跡した.
アレムツズマブ群では,従来療法群と比較して,生検により確認された急性拒絶反応の発生率は,6 ヵ月(3% 対 15%,P<0.001)と 12 ヵ月(5% 対 17%,P<0.001)の両時点で有意に低かった.3 年の時点で,低リスク患者では,生検により確認された急性拒絶反応の発生率はアレムツズマブ群のほうがバシリキシマブ群より低かったが(10% 対 22%,P=0.003),高リスク患者ではアレムツズマブ群とウサギ抗胸腺細胞グロブリン群とのあいだに有意差は認められなかった(18% 対 15%,P=0.63).有害事象発生率は全 4 群で同程度であった.
移植から 1 年後の時点まで,アレムツズマブ投与では,従来療法と比較して,生検により確認された急性拒絶反応の発生頻度が低かった.早期の生検により確認された急性拒絶反応におけるアレムツズマブの明らかな優位性は,移植片拒絶反応リスクの低い患者でのみ認められた.高リスク患者ではアレムツズマブとウサギ抗胸腺細胞グロブリンの有効性は同程度であった.(Astellas Pharma Global Development 社から研究助成を受けた.INTAC ClinicalTrials.gov 番号:NCT00113269)