The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

September 1, 2011 Vol. 365 No. 9

胎児ヘモグロビン発現抑制に必要な機能的要素
A Functional Element Necessary for Fetal Hemoglobin Silencing

V.G. Sankaran and Others

背景

胎児ヘモグロビン遺伝子の調節に関する理解が向上し,β ヘモグロビン異常症に対する胎児ヘモグロビン誘導を標的とする治療アプローチの開発が期待されている.この調節に必要なトランス作用因子が最近の研究で明らかにされているが,関与するシス調節要素については限られた知見しか得られていない.

方 法

β グロビン遺伝子の遺伝子座(β グロビン遺伝子座)におけるまれなヘモグロビン発現パターンを示す 3 家族を同定した.アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションによりこれらの欠失をマッピングし,ポリメラーゼ連鎖反応法と DNA 塩基配列決定により切断点を確認した.これらの欠失を,これまでにマッピングされた欠失と比較し,クロマチン免疫沈降を用いて β グロビン遺伝子座のこれらの部位に結合しているトランス作用因子を検討した.

結 果

下流の切断点が同一の,新たな(δβ)0 サラセミア欠失と,まれな,遺伝的に持続性の胎児ヘモグロビン欠失を見出した.これら 2 つの欠失の比較により,γ グロビン(胎児ヘモグロビン)遺伝子発現抑制に必要とされる小さな遺伝子間領域が同定された.必要とされる遺伝子間領域を保持しながらも,その他の周辺配列を欠失し,胎児ヘモグロビン発現抑制を維持しているクルド人の β0 サラセミア欠失のマッピングを行った.これらの欠失と,これまでにマッピングされたその他の欠失との比較により,γ グロビン発現抑制に必要な δ グロビン遺伝子 5' 末端近傍に,3.5 kb にわたる遺伝子間領域が明らかとなった.重要な胎児ヘモグロビン発現抑制因子 BCL11A とそのパートナー因子が,成人赤血球系細胞のクロマチンにおいてこの領域内で結合していることがわかった.

結 論

β グロビン遺伝子座にまれな欠失を有する 3 家族を検討した結果,胎児ヘモグロビン発現抑制に必要な δ グロビン遺伝子近傍に遺伝子間領域を同定した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 807 - 14. )