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September 1, 2011 Vol. 365 No. 9

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臍帯血幹細胞移植における臍帯大腸炎症候群
Cord Colitis Syndrome in Cord-Blood Stem-Cell Transplantation

A.F. Herrera and Others

背景

下痢は,造血幹細胞移植(HSCT)の合併症として頻度が高い.HSCT 後にみられる下痢の重要な原因は,急性移植片対宿主病(GVHD),感染,投薬などである.臍帯血由来造血幹細胞の移植・生着後に,既知の原因のいずれにも起因しない,培養陰性・抗菌薬感受性の新たな下痢症が認められた.

方 法

当施設で 2003 年 3 月~2010 年 3 月に臍帯血 HSCT を受けた全患者を対象に,後ろ向きコホート研究を実施した.これらの患者における,急性 GVHD,ウイルスまたは細菌感染,他の特定可能な原因に起因しない持続性の下痢症を,臍帯大腸炎症候群と定義した.症例定義を満たした患者の臨床所見・組織病理学的所見をさらに解析した.

結 果

当施設で臍帯血 HSCT を受けた患者 104 例中 11 例(10.6%)に臍帯大腸炎症候群が発現した.Kaplan-Meier 法によって求めた,症候群の症例定義を満たす例の 1 年間の累積確率は 0.16 であった.移植から症候群発現までの期間の中央値は 131 日(範囲 88~314)であった.全患者が,メトロニダゾール単独またはメトロニダゾール+フルオロキノロン併用による 10~14 日間の経験的治療に反応した.11 例中 5 例(45%)は抗菌薬の中止直後に下痢が再発し,再発例全例が再開した抗菌薬治療に反応した.組織学的検査により,臍帯大腸炎症候群患者全例に慢性の活動性大腸炎が認められ,11 例中 7 例(64%)では肉芽腫性炎症を伴っていた.

結 論

臍帯血 HSCT を受けた患者にみられる臍帯大腸炎症候群は,臨床的・組織病理的に急性 GVHD や他の下痢と原因が異なり,この患者集団で比較的頻度が高い.他の原因に起因しない下痢を呈するこのような患者においては,この症候群を考慮すべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 365 : 815 - 24. )