November 22, 2012 Vol. 367 No. 21
30 年間のマンモグラフィ検診が乳癌発生率に及ぼした影響
Effect of Three Decades of Screening Mammography on Breast-Cancer Incidence
A. Bleyer and H.G. Welch
死亡率を低下させるためには,検診は,生命にかかわる疾患を,より早期に,治癒可能な段階で発見するものでなければならない.したがって,効果的な癌検診プログラムは,癌が早期に発見される率を高めると同時に,後期になって受診する率を低下させるものである.
サーベイランス・疫学・最終結果(SEER)のデータを用いて,1976~2008 年の,40 歳以上の女性における早期乳癌(非浸潤性乳管癌,限局癌)および後期乳癌(局所癌,遠隔転移)の発生率の動向を検討した.
米国におけるマンモグラフィ検診の導入は,各年に発見された早期乳癌の症例数が 10 万人あたり 112 例から 234 例と,2 倍の増加に関連しており,増加の絶対数は 10 万人あたり 122 例であった.同時に,後期癌で受診する率は,10 万人あたり 102 例から 94 例へと 8%減少し,減少の絶対数は 10 万人あたり 8 例であった.一定の基礎的疾病負担があると仮定すると,検診によって追加的に早期癌と診断された 122 例のうち 8 例のみが,進行癌に進展すると予想された.ホルモン補充療法に関連する一過性の超過発生を除外し,40 歳未満の女性の乳癌発生率における動向で補正すると,この 30 年間で 130 万人の米国人女性で乳癌が過剰診断された(臨床症状の発現にはいたらなかったであろう腫瘍が検診で発見された)と推定された.2008 年には,70,000 人以上で乳癌が過剰診断されたと推定された.これは診断されたすべての乳癌の 31%に相当する.
早期乳癌の発見数は大幅に増加したにもかかわらず,マンモグラフィ検診により,進行癌で受診する率はわずかしか低下しなかった.どの女性が影響を受けたのかは確かではないが,この不均衡は,新たに診断された乳癌の 1/3 近くに相当する大幅な過剰診断があったこと,また,検診は乳癌死亡率に対して影響があったとしても小さいことを示唆している.