血清クレアチニンとシスタチン C による糸球体濾過量の推定
Estimating Glomerular Filtration Rate from Serum Creatinine and Cystatin C
L.A. Inker and Others
血清クレアチニンに基づく糸球体濾過量(GFR)の推定は,日常診療に用いられている.しかし,この推定は不正確で,慢性腎臓病の過剰診断を招く可能性がある.シスタチン C は,GFR 推定においてクレアチニンに代わりうる濾過マーカーである.
13 研究の計 5,352 例から成る多様な集団において,横断的解析を用いて,シスタチン C のみに基づく推定式と,シスタチン C とクレアチニンを組み合わせた推定式を作成した.続いて,GFR が測定されていた別の 5 研究の 1,119 例において,これらの推定式の妥当性を検証した.シスタチンとクレアチニンの測定法は,一次標準物質にトレーサブルであった.
実測 GFR の平均は,作成データセットで 68 mL/分/1.73 m2 体表面積,検証データセットで 70 mL/分/1.73 m2 であった.検証データセットにおいて,クレアチニン-シスタチン C 推定式は,クレアチニン推定式,シスタチン C 推定式よりも優れていた.3 つの推定式のあいだの偏りは同程度で,実測 GFR と推定 GFR の差の中央値は,クレアチニン-シスタチン C 複合推定式で 3.9 mL/分/1.73 m2 であったのに対し,クレアチニン推定式では 3.7 mL/分/1.73 m2(P=0.07),シスタチン C 推定式では 3.4 mL/分/1.73 m2(P=0.05)であった.複合推定式では,精度が向上し(差の四分位範囲,13.4 mL/分/1.73 m2 対 15.4 mL/分/1.73 m2 [P=0.001],16.4 mL/分/1.73 m2 [P<0.001]),結果がより正確であった(実測 GFR との差が 30%を超えていた推定 GFR の割合(%),それぞれ 8.5 対 12.8,14.1 [両比較において P<0.001]).クレアチニンに基づく推定 GFR が 45~74 mL/分/1.73 m2 であった被験者において,複合推定式により,実測 GFR の<60 mL/分/1.73 m2 または≧60 mL/分/1.73 m2 の分類が改善し(正味の再分類指数 19.4% [P<0.001]),推定 GFR が 45~59 mL/分/1.73 m2 であった被験者の 16.9%が,GFR≧60 mL/分/1.73 m2 に正確に再分類された.
クレアチニン-シスタチン C 複合推定式は,これらのマーカーのいずれか単独に基づく推定式よりも優れていた.この複合推定式は,慢性腎臓病の確認検査に有用である可能性がある.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた.)