The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

July 5, 2012 Vol. 367 No. 1

術後せん妄後の認知機能の経過
Cognitive Trajectories after Postoperative Delirium

J.S. Saczynski

背景

せん妄は心臓手術後によくみられ,認知機能の長期的な変化に関連している可能性がある.われわれは,心臓手術後のせん妄と,術後 1 年間の認知機能の経過を調査した.

方 法

冠動脈バイパス術または弁置換術を予定している 60 歳以上の患者 225 例を対象とした.患者の評価は,術前,術後 2 日目から入院中毎日,術後 1,6,12 ヵ月目に行った.認知機能は,ミニメンタルステート検査(MMSE,0~30 点でスコアが低いほど認知機能が不良であることを示す)を用いて評価した.せん妄は,Confusion Assessment Method を用いて診断した.術後 1 年間の MMSE に基づく認知機能を,患者背景,合併症,病院,手術の種類で補正した.

結 果

術後にせん妄を発症した 103 例(46%)は,術前の MMSE 平均スコアがせん妄を発症しなかった例よりも低かった(25.8 対 26.9,P<0.001).補正モデルでは,せん妄発症例では,術後 2 日目の認知機能(MMSE スコアの測定による)が非発症例よりも大幅に低下し(7.7 ポイント 対 2.1 ポイント,P<0.001),術後 1 ヵ月(MMSE 平均スコア,24.1 対 27.4,P<0.001)と 1 年(25.2 対 27.2,P<0.001)の両時点の認知機能が非発症例よりも有意に低かった.ベースラインの差で補正すると,MMSE 平均スコアの群間差は,術後 30 日の時点では有意であったが(P<0.001),術後 6 ヵ月,12 ヵ月の時点では有意ではなかった(両方について P=0.056).せん妄発症例では,術後 6 ヵ月で術前のベースラインレベルまで戻っていなかった患者の割合が非発症例よりも高かったが(40% 対 24%,P=0.01),12 ヵ月の時点では有意差は認められなかった(31% 対 20%,P=0.055).

結 論

せん妄は心臓手術後 1 年間の認知機能の有意な低下と関連しており,初期の低下と持続する障害を特徴とする経過をたどる.(ハーバード米国人高齢者独立センターほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 30 - 9. )