December 13, 2012 Vol. 367 No. 24
心腎症候群を伴う非代償性心不全に対する限外濾過
Ultrafiltration in Decompensated Heart Failure with Cardiorenal Syndrome
B.A. Bart and Others
限外濾過は,急性非代償性心不全患者において,利尿薬療法に代わる治療戦略の一つである.急性非代償性心不全に腎機能低下と持続的なうっ血を合併した患者における限外濾過の有効性と安全性はほとんど明らかにされていない.
急性非代償性心不全,腎機能低下,持続的なうっ血を呈する患者 188 例を,段階的薬物療法群(94 例)と限外濾過群(94 例)に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは血清クレアチニン値と体重の二変量のベースラインからの変化とし,無作為割付け後 96 時間の時点で評価した.患者を 60 日間追跡した.
限外濾過は,登録後 96 時間での血清クレアチニン値と体重の変化という二変量エンドポイントに関して,薬物療法よりも劣っていた(P=0.003).それは主に,限外濾過群におけるクレアチニン値の上昇に基づいていた.96 時間の時点で,クレアチニン値の変化の平均は,薬物療法群では -0.04±0.53 mg/dL(-3.5±46.9 μmol/L)であったのに対し,限外濾過群では +0.23±0.70 mg/dL(20.3±61.9 μmol/L)であった(P=0.003).登録後 96 時間での体重減少には,薬物療法群と限外濾過群とのあいだで有意差は認められなかった(減少量はそれぞれ 5.5±5.1 kg [12.1±11.3 lb],5.7±3.9 kg [12.6±8.5 lb],P=0.58).限外濾過群では,薬物療法群と比較して重篤な有害事象が発現した患者の割合が高かった(72% 対 57%,P=0.03).
急性非代償性心不全,腎機能低下,持続的なうっ血により入院した患者を対象にした無作為化試験において,段階的薬物療法アルゴリズムは,限外濾過よりも 96 時間の時点での腎機能保護効果に優れており,体重減少量は同程度であった.限外濾過は,有害事象発現率がより高いことと関連した.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00608491)