アフリカ人女性における HIV 感染に対する曝露前予防
Preexposure Prophylaxis for HIV Infection among African Women
L. Van Damme and Others
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)曝露前の抗レトロウイルス薬の予防的投与は,一部の試験では HIV 感染の予防に有効とされているが,有効でないとする試験もある.
無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,ケニア,南アフリカ,タンザニアの HIV 陰性女性 2,120 人を,テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩・エムトリシタビン合剤(TDF–FTC)群とプラセボ群に割り付け,1 日 1 回投与した.主要目的は,HIV 感染予防における TDF–FTC の有効性を検討すること,安全性を評価することとした.
HIV 感染は,TDF–FTC 群の 33 人(発生率 4.7/100 人年)とプラセボ群の 35 人(発生率 5.0/100 人年)に発生し,TDF–FTC 群の推定ハザード比は 0.94(95%信頼区間 0.59~1.52,P=0.81)であった.悪心,嘔吐,アラニンアミノトランスフェラーゼ値上昇を呈した女性の割合は,TDF–FTC 群のほうが有意に高かった(それぞれ P=0.04,P<0.001,P=0.03).肝臓または腎臓の異常による服薬中止率は,TDF–FTC 群(4.7%)のほうがプラセボ群(3.0%)よりも高かった(P=0.051).TDF–FTC 群の HIV 非感染女性において,セロコンバージョンが認められた女性の HIV 感染ウインドウ期に一致する受診時に,直近の服用形跡が認められた割合は,40%未満であった.有効性が認められなかったため,試験は 2011 年 4 月 18 日に早期に中止された.
TDF–FTC の予防的投与によって,プラセボと比較して,HIV 感染率は有意には低下せず,副作用の発生率の上昇に関連した.カウンセリングに力を入れても,服薬遵守率は低いと思われた.(米国国際開発庁ほかから研究助成を受けた.FEM-PrEP ClinicalTrials.gov 番号:NCT00625404)