軽度~中等度のアルツハイマー病に対するベルベセスタットの無作為化試験
Randomized Trial of Verubecestat for Mild-to-Moderate Alzheimer's Disease
M.F. Egan and Others
アルツハイマー病は,脳内でのアミロイドβ(Aβ)沈着によるアミロイド斑の形成を特徴とする.Aβは,アミロイド前駆体蛋白が β部位アミロイド前駆体蛋白切断酵素 1(BACE-1)に切断され,次にγ-セクレターゼに切断されて生成される.ベルベセスタット(verubecestat)は,アルツハイマー病患者の脳脊髄液中の Aβ量を減少させる経口 BACE-1 阻害薬である.
軽度~中等度のアルツハイマー病と臨床診断された患者を対象に,ベルベセスタット 12 mg/日および 40 mg/日をプラセボと比較評価する,78 週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.主要評価項目はアルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度スコア(ADAS-cog;0~70 で,スコアが大きいほど重度の認知症であることを示す)のベースラインから 78 週までの変化量と,アルツハイマー病共同研究の日常生活動作評価尺度スコア(ADCSADL;0~78 で,スコアが小さいほど日常生活機能が低いことを示す)のベースラインから 78 週までの変化量の 2 つとした.
1,958 例が無作為化され,653 例がベルベセスタット 12 mg/日を投与する群(12 mg 群),652 例がベルベセスタット 40 mg/日を投与する群(40 mg 群),653 例がマッチさせたプラセボを投与する群に割り付けられた.試験開始から 50 ヵ月後に,試験は無益性のため早期に中止された.この時点で,試験終了予定まで残り 5 ヵ月を切っており,予定された 1,958 例の登録が完了していた.ADAScog スコアのベースラインから 78 週までの推定平均変化量は,12 mg 群が 7.9,40 mg 群が 8.0,プラセボ群が 7.7 であった(12 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.63,40 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.46).ADCS-ADL スコアのベースラインから 78 週までの推定平均変化量は,12 mg 群が -8.4,40 mg 群が -8.2,プラセボ群が -8.9 であった(12 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.49,40 mg 群とプラセボ群との比較で P=0.32).ベルベセスタット群では,皮疹,転倒・外傷,睡眠障害,自殺念慮,体重減少,毛髪変色などの有害事象の頻度がプラセボ群よりも高かった.
軽度~中等度のアルツハイマー病患者において,ベルベセスタットは認知機能や日常生活機能の低下を抑制せず,治療関連有害事象と関連した.(Merck 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01739348)