October 18, 2018 Vol. 379 No. 16
健康な高齢者における全死因死亡率に対するアスピリンの効果
Effect of Aspirin on All-Cause Mortality in the Healthy Elderly
J.J. McNeil and Others
本誌に同時発表されている Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)試験の主要解析で,高齢者におけるアスピリンの毎日の使用は,主要評価項目の無障害生存期間に利益をもたらさなかったことを報告している.副次的評価項目の全死因死亡率は,アスピリン群のほうがプラセボ群よりも数値的に高いことが観察された.
2010~14 年に,オーストラリアと米国の地域住民で,年齢が 70 歳以上(米国では黒人とヒスパニックは 65 歳以上)で,心血管疾患,認知症,身体障害のない人を登録した.参加者を,アスピリン腸溶剤 100 mg を投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.死亡は,試験群の割付けを知らされていない評価者により,背景原因によって分類された.アスピリン群とプラセボ群とで死亡率を比較するためにハザード比を算出し,特定の死因について探索的な事後解析を行った.
登録された 19,114 人のうち,9,525 人がアスピリン群,9,589 人がプラセボ群に割り付けられた.追跡期間中央値 4.7 年のあいだに 1,052 件の死亡が発生した.全死因死亡のリスクは,アスピリン群 1,000 人年あたり 12.7 件,プラセボ群 1,000 人年あたり 11.1 件であった(ハザード比 1.14,95%信頼区間 [CI] 1.01~1.29).アスピリン群のほうが死亡率が高かったことの主な寄与因子は癌であり,超過死亡は 1,000 人年あたり 1.6 件であった.癌関連死は,アスピリン群の参加者の 3.1%と,プラセボ群の参加者の 2.3%に発生した(ハザード比 1.31,95% CI 1.10~1.56).
アスピリンの投与を毎日受けた一見健康な高齢者では,プラセボの投与を受けた高齢者と比較して高い全死因死亡率が観察され,それは主に癌関連死に起因していた.先行研究の背景に照らし合わせると,この結果は予想外であり,慎重に解釈する必要がある.(米国国立老化研究所ほかから研究助成を受けた.ASPREE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01038583)