ケアの質の改善における pay-for-performance（成果に対する支払い）プログラムの有益性は明らかにされていない．現行の pay-for-performance プログラムからインセンティブを廃止することの影響に関する情報はほとんどない．

英国の「診療の質と成果の枠組み」におけるケアの質の指標のうち，2014 年に金銭的インセンティブが廃止された 12 項目と，インセンティブが継続されている 6 項目について，2010～17 年の電子診療記録（EMR）データの分割時系列分析を行った．インセンティブを廃止することが，ケアの質の指標における成果の変化に及ぼす影響を推定した．

登録患者数が 2,000 万例を超えるイングランドのプライマリケア診療 2,819 件について，完全な時系列データを入手した．金銭的インセンティブ廃止後最初の 1 年間に，12 項目のすべてで，記録されたケアの質に即時の低下が認められた．低下は健康上の助言に関連する指標でもっとも大きく，高血圧患者に対する EMR に記録された生活習慣相談で 62.3 パーセントポイント低下していた（95%信頼区間 [CI] －65.6～－59.0）．変化がより小さかったのは，EMR データが自動的に更新される臨床検査などの臨床活動に関する指標で，冠動脈疾患患者におけるコレステロールコントロールで 10.7 パーセントポイント低下し（95% CI －13.6～－7.8），甲状腺機能低下症患者における甲状腺機能検査で 12.1 パーセントポイント低下していた（95% CI －13.6～－10.6）．インセンティブが継続されている 6 項目では，成果にほとんど変化が認められなかった．

金銭的インセンティブの廃止は，ケアの質の指標における成果の即時の低下に関連していた．一部には，このような低下は EMR の記録における変化を反映している可能性があるが，臨床検査を含む指標における低下は，インセンティブの廃止は提供されるケアにも変化をもたらしたことを示唆している．