The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

June 13, 2019 Vol. 380 No. 24

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

髄膜炎と脳炎の診断における臨床メタゲノムシーケンシング
Clinical Metagenomic Sequencing for Diagnosis of Meningitis and Encephalitis

M.R. Wilson and Others

背景

脳脊髄液(CSF)のメタゲノム次世代シーケンシング(NGS)には,1 回の検査でさまざまな病原体を同定できる可能性がある.

方 法

1 年間の多施設共同前向き研究で,入院患者の感染性髄膜炎と感染性脳炎の診断における CSF のメタゲノム NGS の有用性を検討した.メタゲノム NGS で病原体陽性であったすべての検査結果を,独立した臨床検査により確認した.臨床微生物シーケンシング委員会との遠隔会議と調査により,医師のフィードバックを得た.後ろ向き診療録レビューにより臨床的有用性を評価した.

結 果

8 病院で小児・成人患者 204 例を登録した.患者は重症で,48.5%が集中治療室に入室しており,対象全体の 30 日死亡率は 11.3%であった.57 例(27.9%)で計 58 件の神経系の感染症が診断された.これらの 58 件の感染症のうち,当初の病院での臨床検査では同定されなかった 13 件(22%)が,メタゲノム NGS により同定された.残りの 45 件(78%)のうち,19 件はメタゲノム NGS でも一致する診断が得られた.メタゲノム NGS で同定されなかった 26 件のうち,11 件は血清学的検査でのみ診断され,7 件は CSF 以外の組織検体で診断され,8 件は CSF 中の病原体の力価が低かったためメタゲノム NGS では陰性であった.メタゲノム NGS 単独で診断された 13 件のうち 8 件では臨床効果があったと考えられ,13 件中 7 件で治療指針が示された.

結 論

あらゆる神経浸潤性の病原体を検出するにはルーチンの微生物検査では不十分であることが多い.この研究では,髄膜炎または脳炎の患者から採取した CSF のメタゲノム NGS により,神経感染症の診断精度が向上し,一部の症例で有用な情報が得られた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.PDAID 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02910037)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 2327 - 40. )