髄膜炎と脳炎の診断における臨床メタゲノムシーケンシング
Clinical Metagenomic Sequencing for Diagnosis of Meningitis and Encephalitis
M.R. Wilson and Others
脳脊髄液(CSF)のメタゲノム次世代シーケンシング(NGS)には,1 回の検査でさまざまな病原体を同定できる可能性がある.
1 年間の多施設共同前向き研究で,入院患者の感染性髄膜炎と感染性脳炎の診断における CSF のメタゲノム NGS の有用性を検討した.メタゲノム NGS で病原体陽性であったすべての検査結果を,独立した臨床検査により確認した.臨床微生物シーケンシング委員会との遠隔会議と調査により,医師のフィードバックを得た.後ろ向き診療録レビューにより臨床的有用性を評価した.
8 病院で小児・成人患者 204 例を登録した.患者は重症で,48.5%が集中治療室に入室しており,対象全体の 30 日死亡率は 11.3%であった.57 例(27.9%)で計 58 件の神経系の感染症が診断された.これらの 58 件の感染症のうち,当初の病院での臨床検査では同定されなかった 13 件(22%)が,メタゲノム NGS により同定された.残りの 45 件(78%)のうち,19 件はメタゲノム NGS でも一致する診断が得られた.メタゲノム NGS で同定されなかった 26 件のうち,11 件は血清学的検査でのみ診断され,7 件は CSF 以外の組織検体で診断され,8 件は CSF 中の病原体の力価が低かったためメタゲノム NGS では陰性であった.メタゲノム NGS 単独で診断された 13 件のうち 8 件では臨床効果があったと考えられ,13 件中 7 件で治療指針が示された.
あらゆる神経浸潤性の病原体を検出するにはルーチンの微生物検査では不十分であることが多い.この研究では,髄膜炎または脳炎の患者から採取した CSF のメタゲノム NGS により,神経感染症の診断精度が向上し,一部の症例で有用な情報が得られた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.PDAID 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02910037)