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February 14, 2019 Vol. 380 No. 7

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MRSA 保菌者における退院後の感染リスクを低下させるための除菌
Decolonization to Reduce Postdischarge Infection Risk among MRSA Carriers

S.S. Huang and Others

背景

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を保菌している入院患者は,退院後の感染のリスクが高い.

方 法

MRSA を保菌している患者(保菌者)を対象に,退院後の衛生教育を,退院後の衛生教育+除菌と比較する多施設共同無作為化比較試験を行った.除菌は,クロルヘキシジンによる口腔洗浄,クロルヘキシジンを用いた入浴またはシャワー浴,ムピロシンの鼻腔内塗布を 5 日間,月 2 回,6 ヵ月間行うこととした.参加者を 1 年間追跡した.主要転帰は,米国疾病管理予防センター(CDC)基準に従って定義された MRSA 感染とした.副次的転帰は,臨床的判断に基づいて決定された MRSA 感染,あらゆる原因による感染,感染に伴う入院などとした.すべての解析は,per-protocol 集団(無作為化され,選択基準を満たし,募集時の入院を生存退院して以降も生存していたすべての参加者)と as-treated 集団(レジメン遵守で層別化した参加者)において,比例ハザードモデルを用いて行われた.

結 果

per-protocol 集団では,MRSA 感染は,教育群では 1,063 例中 98 例(9.2%)に発生し,除菌群では 1,058 例中 67 例(6.3%)に発生し,MRSA 感染者の 84.8%が入院した.あらゆる原因による感染は,教育群の 23.7%と除菌群の 19.6%に発生し,感染者の 85.8%が入院した.MRSA 感染のハザードは,除菌群のほうが教育群よりも有意に低く(ハザード比 0.70,95%信頼区間 [CI] 0.52~0.96,P=0.03,1 件の感染を予防するための治療必要数 30,95% CI 18~230),この低さが,MRSA 感染による入院のより低いリスクをもたらした(ハザード比 0.71,95% CI 0.51~0.99).除菌群のほうが,臨床的に判断されたあらゆる原因による感染の確率が低く(ハザード比 0.83,95% CI 0.70~0.99),感染に伴う入院の確率が低かったが(ハザード比 0.76,95% CI 0.62~0.93),副次的転帰に対する治療効果は,多重比較の補正を事前に規定していなかったため,慎重に解釈すべきである.as-treated 解析では,レジメンを完全に遵守した除菌群の参加者は,教育群よりも MRSA 感染が 44%少なく(ハザード比 0.56,95% CI 0.36~0.86),あらゆる原因による感染が 40%少なかった(ハザード比 0.60,95% CI 0.46~0.78).副作用(すべて軽度)は,参加者の 4.2%で発生した.

結 論

クロルヘキシジンとムピロシンを用いた退院後の MRSA 除菌により,MRSA 感染のリスクは教育単独よりも 30%低くなった.(AHRQ 医療関連感染プログラムほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01209234)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 638 - 50. )