研修医の柔軟な勤務時間規定と標準の規定とによる患者の安全性転帰の比較
Patient Safety Outcomes under Flexible and Standard Resident Duty-Hour Rules
J.H. Silber and Others
医学研修プログラムにおける長時間のシフトが,患者の安全性に悪影響を及ぼす可能性があるという懸念が続いている.
2015~16 年の 1 学年度に,63 の内科研修プログラムを対象としてクラスター無作為化非劣性試験を行った.プログラムを,2011 年 7 月に米国卒後医学教育認定評議会(ACGME)によって採択された標準的な勤務時間で実施する群と,シフト時間の制限やシフト間の義務的休息時間をとくに定めないより柔軟な規定で実施する群に無作為に割り付けた.各プログラムの主要評価項目は,未補正 30 日死亡率の試験前年度から試験年度までの変化とし,メディケア請求データにより確認した.柔軟なプログラム群の 30 日死亡率の変化は,標準プログラム群よりも 1 パーセントポイント(非劣性マージン)を超えて不良にならない(difference-in-differences 分析)という仮説を立てた.副次的評価項目は,患者の安全性に関するほかの 5 つの指標における変化と,すべての指標のリスク補正後の結果とした.
患者の 30 日死亡率の変化(主要評価項目)に関して,柔軟なプログラム群(試験年度 12.5% 対 試験前年度 12.6%)は標準プログラム群(試験年度 12.2% 対 試験前年度 12.7%)に対して非劣性を示した.非劣性検定で,死亡率の変化の群間差に関する片側 95%信頼区間上限の推定値(0.93%)は事前に規定した非劣性マージンの 1 パーセントポイントを下回り,有意性が示された(P=0.03).未補正 7 日再入院率,患者の安全性の指標,メディケアの支払額についても変化の差は 1 パーセントポイントを下回っており,30 日再入院率と入院期間の長期化については非劣性基準を満たさなかった.リスク補正後の指標もおおむね同様の結果が示された.
研修医の勤務時間のスケジュールをプログラム責任者が柔軟に調整できるようにしても,30 日死亡率や患者の安全性に関するほかの評価項目に悪影響は認められなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所,米国卒後医学教育認定評議会から研究助成を受けた.iCOMPARE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02274818)