December 12, 2019 Vol. 381 No. 24
エボラウイルス病の治療法の無作為化比較試験
A Randomized, Controlled Trial of Ebola Virus Disease Therapeutics
S. Mulangu and Others
エボラウイルス病(EVD)の実験的治療薬がいくつか開発されているが,とくに有望な治療薬については安全性と有効性を無作為化比較試験で評価する必要がある.
2018 年 8 月に EVD の集団発生が起こったコンゴ民主共和国において,4 種類の試験治療薬を検討する臨床試験を行った.逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応検査でエボラウイルス RNA 陽性であった,すべての年齢の患者が登録された.全例が標準治療を受け,1:1:1:1 の割合で 3 種類のモノクローナル抗体を混合した ZMapp(対照群),抗ウイルス薬レムデシビル(remdesivir),1 種類のモノクローナル抗体 MAb114,3 種類のモノクローナル抗体を混合した REGN-EB3 のいずれかの静脈内投与に無作為に割り付けられた.REGN-EB3 群は試験実施計画書の改訂後に追加されたため,これらの患者のデータは,REGN-EB3 群の追加時またはそれ以降に登録された ZMapp 群(ZMapp サブグループ)の患者のデータと比較した.主要エンドポイントは 28 日の時点での死亡とした.
2018 年 11 月 20 日~2019 年 8 月 9 日に 681 例が登録された.2019 年 8 月 9 日,データ安全性モニタリング委員会は試験の残りの期間は患者を MAb114 群と REGN-EB3 群にのみ割り付けることを推奨した.この推奨は,この 2 群が死亡率に関して ZMapp 群とレムデシビル群よりも優れていることを示した中間解析の結果に基づくものであった.28 日の時点での死亡は,MAb114 群では 174 例中 61 例(35.1%)に発生していたのに対し,ZMapp 群では 169 例中 84 例(49.7%)であり(P=0.007),REGN-EB3 群では 155 例中 52 例(33.5%)に発生していたのに対し,ZMapp サブグループでは 154 例中 79 例(51.3%)であった(P=0.002).入院前の症状の持続期間が短いことと,ベースラインのウイルス量と血清クレアチニン値およびアミノトランスフェラーゼ値が低いことは,それぞれ生存率の改善と相関していた.4 件の重篤な有害事象が,試験薬に関連している可能性があると判断された.
MAb114 と REGN-EB3 はいずれも,EVD による死亡率を低下させることに関して,ZMapp よりも優れていた.科学的・倫理的に適切な臨床研究は,集団発生中に実施することが可能であり,集団発生への対応に有用な情報を提供しうる.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.PALM 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03719586)