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January 30, 2020 Vol. 382 No. 5

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可溶性ウロキナーゼ受容体と急性腎障害
Soluble Urokinase Receptor and Acute Kidney Injury

S.S. Hayek and Others

背景

急性腎障害の頻度は高く,障害と医療の利用に大きな影響を及ぼす.可溶性ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(suPAR)はシグナル伝達に関わる糖蛋白であり,腎疾患の成因に関与していると考えられている.われわれは,複数の臨床的背景で,suPAR 高値により患者が急性腎障害を発症しやすくなるかどうかを検討し,また,実験モデルを用いて suPAR の作用機序を同定し,suPAR を治療標的として評価した.

方 法

suPAR の血漿濃度を,冠動脈造影を受ける患者と心臓手術を受ける患者では手技の前に,重篤な患者では集中治療室入室時に測定した.7 日の時点での急性腎障害のリスクを主要評価項目とし,90 日の時点での急性腎障害または死亡を副次的評価項目とし,suPAR 濃度の四分位ごとに評価した.実験的研究では,ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(uPAR)に対するモノクローナル抗体を,造影剤を投与したトランスジェニックマウスでの急性腎障害を緩和するための治療戦略として用いた.また,遺伝子組換え suPAR に曝露させたヒト腎近位尿細管(HK-2)細胞で細胞生体エネルギー学と活性酸素種産生を検討した.

結 果

冠動脈造影を受ける患者 3,827 例,心臓手術を受ける患者 250 例,重篤な患者 692 例の suPAR 濃度を評価した.冠動脈造影を受けた患者では,318 例(8%)が急性腎障害を発症した.suPAR 濃度の最高四分位群における(最低四分位群と比較した)急性腎障害の補正オッズ比は 2.66(95%信頼区間 [CI] 1.77~3.99)であり,90 日の時点での急性腎障害または死亡の補正オッズ比は 2.29(95% CI 1.71~3.06)であった.手術患者と重篤な患者のコホートで結果は同様であった.造影剤を投与した suPAR 過剰発現マウスでは,野生型マウスと比較して,急性腎障害の機能的所見と組織学的所見が多く認められた.suPAR で処理した HK-2 細胞では,エネルギー需要とミトコンドリアによる超酸化物産生の亢進が認められた.抗 uPAR モノクローナル抗体による前治療は,suPAR 過剰発現マウスの腎障害を緩和し,HK-2 細胞の生体エネルギー学的変化を正常化させた.

結 論

suPAR 高値は,複数の臨床的背景,実験的背景において急性腎障害との関連を示した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 416 - 26. )