October 1, 2020 Vol. 383 No. 14
PD-L1 発現量で選択した非小細胞肺癌患者の一次治療としてのアテゾリズマブ
Atezolizumab for First-Line Treatment of PD-L1–Selected Patients with NSCLC
R.S. Herbst and Others
プログラム死リガンド 1(PD-L1)が発現している転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対する一次治療としての抗 PD-L1 モノクローナル抗体アテゾリズマブの有効性と安全性が,プラチナベースの化学療法と比較してどうかは明らかにされていない.
化学療法歴がなく,SP142 を用いた免疫組織化学法で PD-L1 の発現を腫瘍細胞の 1%以上または腫瘍浸潤免疫細胞の 1%以上に認める転移性の非扁平上皮または扁平上皮 NSCLC 患者を対象に,無作為化非盲検第 3 相試験を行った.患者を,アテゾリズマブ群と化学療法群に 1:1 の割合で割り付けた.EGFR 変異や ALK 転座のない,野生型の腫瘍を有する患者の intention-to-treat 集団で,全生存期間(主要評価項目)を PD-L1 の発現状態により階層的に検討した.EGFR と ALK が野生型の腫瘍を有する集団では,2 つの PD-L1 検査法,および血液中の腫瘍遺伝子変異量に基づくサブグループにおいても,全生存期間と無増悪生存期間を前向きに評価した.
全体で 572 例を登録した.EGFR と ALK が野生型の腫瘍で PD-L1 発現量がもっとも高かったサブグループ(205 例)では,全生存期間中央値はアテゾリズマブ群のほうが化学療法群よりも 7.1 ヵ月長かった(20.2 ヵ月 対 13.1 ヵ月,死亡のハザード比 0.59,P=0.01).安全性を評価しえたすべての患者で,有害事象はアテゾリズマブ群の 90.2%と化学療法群の 94.7%に発現し,グレード 3 または 4 の有害事象はそれぞれ 30.1%と 52.5%に発現した.血液中の腫瘍遺伝子変異量が高いサブグループでは,アテゾリズマブのほうが全生存期間と無増悪生存期間が良好であった.
組織型にかかわらず PD-L1 発現量が高い NSCLC 患者では,アテゾリズマブ投与により,プラチナベースの化学療法と比較して全生存期間が有意に延長した.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社/ジェネンテック社から研究助成を受けた.IMpower110 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02409342)