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December 10, 2020 Vol. 383 No. 24

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SARS-CoV-2 の遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンの第 1・2 相試験
Phase 1–2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine

C. Keech and Others

背景

NVX-CoV2373 は,三量体全長 SARS-CoV-2 スパイク糖蛋白と Matrix-M1 アジュバントで構成される,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(rSARS-CoV-2)の遺伝子組換えナノ粒子ワクチンである.

方 法

この rSARS-CoV-2 ワクチンの安全性と免疫原性を評価するため,健康な成人 131 例を対象に無作為化プラセボ対照第 1・2 相試験を開始した(用量は 5 μg と 25 μg で,Matrix-M1 アジュバント添加または無添加,観察者には試験群の割付けを盲検化).第 1 相ではワクチンを 21 日間隔で 2 回筋肉内接種した.主要転帰は,副反応および米国食品医薬品局(FDA)の毒性評価尺度で判定した臨床検査値(生化学・血液学的検査)に基づく安全性と,IgG 抗スパイク蛋白反応(酵素免疫測定法 [ELISA] 単位)とした.副次的転帰は自発的に報告された有害事象,野生株ウイルス中和(マイクロ中和試験で測定),T 細胞応答(サイトカイン染色で評価)などとした.IgG ELISA とマイクロ中和試験の結果を,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)患者(大部分が症候性)の回復期血清検体 32 例(IgG)および 29 例(中和)と比較した.35 日目に主要解析を行った.

結 果

無作為化により 83 例がアジュバント添加ワクチン群,25 例がアジュバント無添加ワクチン群,23 例がプラセボ群に割り付けられた.重篤な有害事象は認められなかった.副反応は,参加者の大部分でなしまたは軽度であり,アジュバント添加ワクチンでより多く,発現期間は短かった(平均 2 日以下).1 例に軽度の発熱が 1 日あった.自発的に報告された有害事象は大部分が軽度であり,重度の有害事象はなかった.アジュバントの添加は,免疫応答を強化し,必要な抗原量を少なくし,1 型ヘルパー T 細胞(Th1)応答を誘導した.アジュバント添加ワクチン 5 μg 2 回のレジメンにより,Covid-19 患者(大部分が症候性)の回復期血清中の抗体価を上回る抗スパイク IgG 抗体(幾何平均値 63,160 ELISA 単位)と中和抗体(幾何平均値 3,906)が誘導された(Covid-19 患者ではそれぞれ幾何平均値で 8,344 と 983).

結 論

35 日時点で,NVX-CoV2373 は安全と思われ,Covid-19 回復期血清中の抗体価を上回る免疫応答を誘導した.Matrix-M1 アジュバントは Th1 表現型に方向付けされる CD4 陽性 T 細胞応答を誘導した.(感染症流行対策イノベーション連合ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04368988)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 2320 - 32. )