December 10, 2020 Vol. 383 No. 24
Covid-19 入院患者に対するトシリズマブの有効性
Efficacy of Tocilizumab in Patients Hospitalized with Covid-19
J.H. Stone and Others
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)で入院し,人工呼吸管理を受けていない患者に対するインターロイキン-6 受容体阻害薬の有効性は明らかにされていない.
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染が確認され,炎症亢進状態にあり,発熱(体温>38℃),肺浸潤,酸素飽和度 92%超を維持するための酸素投与の必要性という 3 つの徴候のうち 2 つ以上を有する患者を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.患者を,標準治療+トシリズマブ(8 mg/kg 体重)単回投与群と標準治療+プラセボ投与群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は挿管または死亡とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.副次的有効性転帰は臨床的増悪と,ベースライン時に酸素投与を受けていた患者における酸素投与の中止の 2 つとし,いずれも生存時間解析で評価した.
243 例を組み入れた.内訳は男性 141 例(58%),女性 102 例(42%)であった.年齢中央値は 59.8 歳(範囲 21.7~85.4 歳)であり,45%はヒスパニック系またはラテン系であった.トシリズマブ群のプラセボ群と比較した挿管または死亡のハザード比は 0.83(95%信頼区間 [CI] 0.38~1.81,P=0.64)であり,疾患増悪のハザード比は 1.11(95% CI 0.59~2.10,P=0.73)であった.14 日時点での疾患増悪の割合は,トシリズマブ群で 18.0%,プラセボ群で 14.9%であった.酸素投与中止までの期間の中央値は,トシリズマブ群で 5.0 日(95% CI 3.8~7.6),プラセボ群で 4.9 日(95% CI 3.8~7.8)であった(P=0.69).14 日時点で依然酸素投与を受けていた割合は,トシリズマブ群で 24.6%,プラセボ群で 21.2%であった.有害事象としての重篤な感染症は,トシリズマブの投与を受けた患者のほうがプラセボの投与を受けた患者よりも少なかった.
トシリズマブは中等症の Covid-19 で入院中の患者における挿管または死亡の予防に有効ではなかった.しかし,有効性比較の信頼区間が広かったため,なんらかの有益性,あるいは有害性を否定することはできない.(ジェネンテック社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04356937)