August 20, 2020 Vol. 383 No. 8
糖尿病に対する食事療法と胃バイパス術とで比較した代謝機能への効果
Effects of Diet versus Gastric Bypass on Metabolic Function in Diabetes
M. Yoshino and Others
2 型糖尿病患者では,Roux-en-Y 法胃バイパス術が,代謝機能に対して体重減少とは独立した治療的効果をもたらすことがいくつかの研究から示唆されている.
糖尿病を有する肥満患者 22 例に胃バイパス術(手術群)または食事療法のみ(食事療法群)を行い,両群間でマッチさせた体重減少(約 18%)の前後の糖代謝恒常性の制御因子を評価した.主要評価項目は肝臓インスリン感受性の変化とし,低用量インスリン持続投与下(3 段階の高インスリン正常血糖クランプ法の第 1,第 2 段階)で評価した.副次的評価項目は骨格筋インスリン感受性,β 細胞機能,24 時間の血糖およびインスリンプロファイルの変化とした.
体重減少は,糖産生のベースラインからの抑制率の増加と関連し,クランプ法の第 1 段階では,食事療法群では平均 7.04 μmol/kg 除脂肪量/分(95%信頼区間 [CI] 4.74~9.33)増加,手術群では 7.02 μmol/kg 除脂肪量/分(95% CI 3.21~10.84)増加し,第 2 段階ではそれぞれ 5.39 μmol/kg 除脂肪量/分(95% CI 2.44~8.34)増加,5.37 μmol/kg 除脂肪量/分(95% CI 2.41~8.33)増加し,群間に有意差はなかった.体重減少はインスリン刺激による糖取り込み率の増加と関連し,食事療法群では 30.5±15.9 μmol/kg 除脂肪量/分から 61.6±13.0 μmol/kg 除脂肪量/分に増加,手術群では 29.4±12.6 μmol/kg 除脂肪量/分から 54.5±10.4 μmol/kg 除脂肪量/分に増加し,群間に有意差はなかった.体重減少は β 細胞機能(インスリン感受性に比してのインスリン分泌)を上昇させ,食事群では 1.83 単位(95% CI 1.22~2.44)上昇,手術群では 1.11 単位(95% CI 0.08~2.15)上昇し,群間に有意差はなかった.また体重減少は両群の 24 時間の血糖値とインスリン値の曲線下面積を減少させ,群間に有意差はなかった.いずれの群にも重大な合併症は生じなかった.
2 型糖尿病を有する肥満患者を対象としたこの試験では,代謝への有益性は胃バイパス術と食事療法とで同程度であり,また,体重減少そのものに関連しているようであり,体重減少とは独立した臨床的に重要な,明白な効果はなかった.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02207777)